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January 12, 2005
『日米IT企業の「戦略の同質性」』

新年早々、いつまで持つかわからないけど、Blogの更新頻度上げる努力をしてみたいと思います。

CNET JapanのBlogで有名な梅田望夫氏の産経新聞「正論」欄の記事から。

【正論】IT産業の潮目が読めぬ日本勢 モノづくりの強さ過信を危惧す (Sankei Web)
梅田氏の個人サイトの同内容エントリ

相変わらず時代の切り取り方が上手い。この記事の内容に続いて、梅田氏のあたまの中には様々なシナリオや仮説があるのだろうけど、そこまでは書いていない。しかし、昨年のeビジネス環境を振り返るにあたり、ひとまずの分かりやすい見取り図を与えてくれる。

ただ、梅田氏の意見は、まさに「正論」なわけだが、ところどころで違和感も感じる。

一番気になったのが、分析の視点が、国レベルと企業レベルでコロコロと変わるところ。IBMやレノボなどの個別企業の話をしながら、最後には「日本は・・・」、「アメリカは・・・」となるのである。インターネットの「あちら側」と「こちら側」という表現は良いが、それに対する姿勢は当然ながら個別企業ごとに異なるはずで、そこに様々な個別企業のビジネス戦略が絡むと、「日本」というユニットでは議論を整理できなくなるのは当然だ。

モノづくりの世界としての「こちら側」に没頭する日本、とあるが、それはあまりに十把一絡げというものだろう。もちろん、Googleに匹敵するような「あちら側」プレイヤーは日本には存在していないが、まだまだ旧態依然ながらも「コンテンツ」という見えないどじょうを追いかけ始めた国内メディア産業もある。IBMやレノボに関するニュースも、極めてシンボリックなニュースだったが、そこからいきなり議論を国レベルに持ち上げるのは乱暴なように見える。

ただ、梅田氏のこの記事は新聞に掲載された一般大衆向けのものなので、あえて分かりやすい表現や問題の切り取り方をしている。それを踏まえて、もはや国というユニットでIT産業やeビジネスを見ることの危うさは、梅田氏は十分すぎるほど分かった上での記事だというように理解すれば、この記事で梅田氏は、あえて「あちら側 vs. こちら側」や「Google vs. 東芝・富士通・NEC」という目を引きやすい(が、多分にミスリーディングな)図式を持ち出して、日本の経営者や政策立案者たちに「(モノづくりに注力するという)目の前の最適解が長期的にベストな戦略ではないかもよ」ということを知らせたかったのではないだろうか。

「選択と集中」の標語のもと、「日本の得意分野で頑張るしか生き残る道はないのだ」という脅迫めいた経産省あたりからのメッセージを受け取った国内IT関連企業の経営者たちは、当然オートマティックに「俺たちはやっぱモノづくりでしょ。しかもすり合わせで作るっきゃないしょ」という結論に行き着く。

しかしながら、インターネットの怖いところは、それまでの産業構造や市場セグメントを崩してかき混ぜてしまったことであり、音楽配信ビジネスに見られるように、これまで競合とも思っていなかったプレイヤーと、同じ生活者の限られた財布を巡って争わなければならなくなったことだ。競争の軸が変われば、これまで重要と考えられていた説明変数が突如として意味をもたなくなり、そして問題の本質に気がついたころには、競争のステージは次に移ってしまっており、その製品や事業はいかにゆるやかな死を迎えられるかという点でしか語る意味がなくなる。これは、まさにクリステンセンがいう「イノベーターのジレンマ(The Innovator's Dilemma)」であり、「破壊的技術(Disruptive Technology)」に対する対応戦略の難しさである。

情報環境がますます整い、生活者の目の前の製品やサービスはコモディティ化の道をスピードを上げながら進んでいく。変化の緩やかな競争環境では、いまいる産業の枠組みを前提にして、競合に対しいかに優位な「ポジション」を取るかという戦略が功を奏したが、競争の枠組みそのものが変わる環境では、保有する資源を基に「模倣困難性」を高めるべきというのが、バーニーらの資源ベースの戦略論(Resource-based View of Strategy)だが、この意味では、Googleも東芝も富士通もNECも、愚直にこれを実践しているまでだ。

Googleは、生活者間の情報流通の流れを、検索というフェーズで切り取り、それを圧倒的な技術力を持って囲い込もうとしている。確かに、Googleという「あちら側」の企業も、収益の源泉は広告という「こちら側」で作られた従来産業の枠組みでしかないという意見(from 切込隊長Blog)もある。その通りだろう。しかし、Technology-orientedな差別化戦略は競合に容易く模倣されてしまうので危険だという従来型の戦略論の真逆を行くGoogleの超Technology-oriented戦略は、それが構築されてしまった今では有無を言わさぬ説得力を持ち、「こちら側」のプレイヤーが掴んでいた生活者の財布を強引に横取りするようになる。

国内のIT関連企業も、自分たちの競争優位な資源をもとに戦略を立て、当然現時点での強みである「モノづくり」に回帰しようとする。欧米のプレイヤーには模倣が難しい「すり合わせ」型のモノづくり戦略で勝ち残ろうとする戦略である。この意味では、Googleと国内企業の「戦略の同質性」のほうに着目すべきではないかと思う。

梅田氏は、「あちら側」「こちら側」という分かりやすい隠喩を用いながら、日米IT関連企業の「戦略の同質性」ゆえに、異なる市場セグメントで棲み分けることなどムリで、インターネットにより「ガチャガチャポン」された産業構造の中、いずれ思わぬフィールドでガチンコ勝負することもあるのだから、「あちら側」「こちら側」という事前規定そのものが意味がないのだ、と逆説的に言いたいのではないか。

「リアル vs. バーチャル」、「モノの経済 vs. 情報の経済」という区分けは分かりやすいが、経済活動のなかで交換されているのは、何らかのサービスとその対価としての何か(多くの場合カネ)であり、その交換の仕組みやプロセスが「リアル」か「バーチャル」であるかはあまり意味を持たなくなってきている。金融業はもちろんのこと、「リアル」な商品を扱う物販の世界ですら、もはや情報サービス産業となっている。だからこそ、「モノづくりの強みを過信し、そこにしか生き場所がないと自己規定するあまりに『こちら側』に没頭する日本企業」や、それ以上に、そうした戦略志向を企業に促すような政策メッセージへの警鐘なのではないかと(極めて勝手に)思った。

長くなったが、梅田氏のこのような記事(とそれに対する切込隊長のエントリ)を読んでいろんなことを考えさせられたわけで、けど、自分自身でまだまだ整理できなくていて、かなりムズムズした感じではあるが、このBlogの(前回の年賀エントリを除いて)今年はじめてのエントリとして紹介するに相応しいものであると強く思ったわけである。

けど、柄にもなくこんな長文エントリをいきなり年初から書いてしまい、ちょっとマズイなぁと思う次第でもあります・・・。

P.S.
隊長殿、トラックバック連発してしまってスミマセン・・・。

Posted by MK @ 11:22 PM
Category : E-biz news



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