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February 20, 2005
『スタンフォード訪問』

昨日仕事で行っていたスタンフォードから戻ってまいりました。現地でたった3泊の訪問だったけど、収穫があまりに多すぎてビックリしているくらい。

今回のメインの目的は、僕も参加している宝塚都市再生プロジェクトの一環で、アート・エンターテイメント・メディア研究に関する産学連携の海外事例の視察ということで、スタンフォード大学のMedia Xという産学連携研究ネットワークを視察すること。昨年の11月にこのMedia Xの日本対応コーディネーターの金松洋子氏に大阪でお目にかかり、そのときにも金松氏に「実際にスタンフォードに伺えればいいなぁと思っておりますぅ」なんてことを言っていたのだが、思ったよりも早く今回実現した。

僕はスタンフォード大学に訪れるのは今回が初めてということもあって、はじめからいろんな意味で期待大の訪問だった。スタンフォード大学と言えばシリコンバレー、シリコンバレーと言えばスタンフォード大学というくらい、この両者の関係は深い。僕もIT産業やネットビジネスのことを研究したり教えていたりするのに、一度もシリコンバレーを訪れたことがないことは僕自身ちょっと気になっていたわけで、それが今回仕事を絡めてこのようなかたちで訪問することができ、まさにパーフェクトといった感じ。

以下、このスタンフォードでの4日間の僕の動きを簡単に記してみたい。

■2/15(火)

関空を発ち、現地の朝8時半にサンフランシスコ国際空港に到着。この日はあいにくの雨。すぐにタクシーに乗り、スタンフォード大学があるパロアルトに向かう。ホテルは大学のキャンパスのすぐそばにあるものを予約しておいたので、まずはそちらに向かう。空港から40分ほどでホテル到着、荷物を置いてまずは金松氏に連絡を取り、車でひろってもらう。

まずは昨年の11月にも大阪であったMedia XのExecutive DirectorのProf. Keith Devlinにご挨拶に。彼は今回の僕の訪問のコーディネートをしてくれて、僕が話しを聞きたいと思っていた何人かの先生にとても親切に繋いでくれた。Keithと金松氏と僕でランチを取りながら、Media Xの現状や様々な活動についてお話を伺った。

13時に今回最初のアポイントメントのProf. Pamela Hindsに会いに行く。Pamelaは今回のMedia X訪問とは関係なくとも、ぜひ一度会いたいと以前から思っていた研究者だった。というのも、彼女の研究は僕の研究関心と極めて近く、僕の博士研究にもとても強い影響を与えていたからだ。今回実際に会ってみて、とっても感じのよい女性で、Media Xの枠組みのなかで現在進めている研究について詳しく教えてくれた。

14時には2つ目のアポイントメントとしてProf. Cliff Nassと会う予定だった。しかし、Cliffが突然の病気でキャンセルになってしまった。Cliffは「Media Equation(邦訳:『人はなぜコンピューターを人間として扱うか―「メディアの等式」の心理学』)の著者の一人で、日本でも著名なコミュニケーション学の研究者なので、今回会えるのをとても楽しみにしていたので、とっても残念。

アポが一つ空いたので、Keithと金松氏がベースとしているCLSI (Center for the Study of Language and Information)に立ち寄らせてもらった。そこでちょうど火曜日の15時に開いているというセンター内のティーパーティーに参加させてもらい、そこでCLSIのいろんな研究者とおしゃべりさせてもらった。なかでも、Prof. Pat Langleyとは結構長くお話させてもらった。後から金松氏に聞いたのだが、PatはComputer Learningの分野ではとっても有名な方だそうで、その筋では「神様」的な存在だとか。こんな研究者がゴロゴロいるのがスタンフォードのすごさだろう。しかし、彼の超早口には閉口。

時差ぼけの体と脳味噌に鞭打ち、17時からは、CNetのBlogで有名な梅田望夫氏に会いに行く。梅田氏とは面識が無かったのだが、常々Blogを拝見していて一度お話したいなぁと思っていたので、不躾にもメールを送ってみたところ打ち合わせを快諾してくださった。梅田氏のオフィスはスタンフォード大のすぐ近くにあるので、金松氏に車で送ってもらった。シリコンバレーで長くビジネスをされている梅田氏に、最近のシリコンバレーやその他ITベンチャーの動きなどについて詳しくお話を聞かせてもらった。僕のどんな質問にも梅田氏からとても鋭く且つ明快な答えがズバズバ返ってくるので、とても刺激的だった。

その後、ホテル近くの中華料理屋で金松氏と軽く夕食をとってからホテルに戻り、そのままバタンキュー。

■2/16(水)

2日目は晴れ。この日最初のアポは、11時にDr. Renate Fruchterと打ち合わせ。RenateはCivil Engineering Departmentの研究者だが、Media X関係でGlobal Project TeamやConcurrent Engineeringに関する非常に興味深い研究をしている。彼女はルーマニア人だそうで、ゆっくりとした口調でひとつひとつしっかりと話をしてくれて、とても誠実な対応をして頂いた。彼女の強さは、Engineeringの軸がしっかりあると同時に、Social Scienceのアプローチも研究に柔軟に取り入れている懐の深さだろう。

午後は大学のキャンパスをぶらぶら散歩しながら、大学のBookstoreに立ち寄ってみた。さぞかし品揃えの良い本屋なんだろうなぁと期待して入ったのだけど、正直たいしたことはなかった。結局2冊仕入れただけ。

以下は散歩中にキャンパス内で撮ったいくつかの写真。

Main QuadからPalm Streetを臨む

訪問したコミュニケーション学部がある建物

有名なHoover Tower

壁画が美しいChurch


夕方以降はもともと予定が入っていなかったのだが、金松氏が気を利かせてくれて、Squire, Sanders & Dempsey, L.L.P.という弁護士事務所に所属している日本人弁護士の下田範幸氏たちが主催するカリフォルニア州の日本企業向けの法律セミナーに誘ってくれた。このセミナーはすでに1年以上続いている連続セミナーで、今回のテーマは"Doing Business in CA: Legal Issues regarding Product Distribution"というもの。物品取引における日本とアメリカ(特に加州)の法律の違いについて詳しい説明があり、法律には素人の僕でも「ほっほー」というようなことを色々教えてもらった。

そのセミナーが終わったあとで、ワインと軽食が出る軽い懇親会があったのだが、そこでセミナーに参加していたいろんな日本人のビジネスマン/ウーマンの方々ともお話できて、とても楽しかった。そこでお話した方の一人で、NEC(日本電気)のアメリカ支社で長らく働かれて、いまはシリコンバレーのベンチャーキャピタル会社でGeneral Managerをされているという加藤晴洋氏と会話がはずんで、「もしよろしければ明日オフィスに来ませんか」とお誘いを受けた。もちろん断る理由もなく、次の日のアポが一つ増えた。

■2/17(木)

3日目は曇り後雨。この日はまず9時にProf. Jeremy Bailensonに会う。Jeremyは昨年11月の大阪でのMedia Xのイベントで来日していたときにも会っていたので、3ヶ月ぶりの再会となる。JeremyはもともとはSocial Psychologistなのだが、Virtual Reality(VR)の技術を様々な仕事の現場に応用する研究/実験をしており、昨年の彼のプレゼンテーションに非常に興味を持った僕は、今回彼のラボを訪ねさせてもらった。

ヘッドギアに見えるVRの世界を単なるエンターテイメント的な活用ではなく、より実践的な仕事の文脈での活用(例えば、警察の被疑者取調べなど)を目指して、彼のラボでは様々な実験と研究を進めている。今回僕もヘッドギアを着けて実際にVRの世界を体験させてもらった。一昔前のVRとは異なり、非常にスムーズな動きでグラフィックもかなり精密だった。もちろんまだまだ様々な限界もあることも事実だが、ゲームなどより目的を明確にした仕事の文脈のほうがいろんな活用の可能性があるのだと思った。

彼とはかなりフランクに話をしたので、他にもいろんなことを聞けた。授業は週1~2コマ、1年の半分は研究に使える。その分、研究成果に対するプレッシャーがとてつもなく大きいとのこと。成果を質・量ともに出さなければ「テニュア(終身在職権)」を取れないので、良い研究をしないと5~6年で放り出されることになる。けど、そうした研究のプレッシャーは大きいが、研究者としてスタンフォードで働けることはとても幸せだと言っていた。

お昼は大学の敷地内にあるStanford Shopping Centerに立ち寄って、ちょっと買い物をしつつお昼を食べる。15時には前日に急に決まった加藤晴洋氏との打ち合わせ。加藤氏は、もともとNECのエンジニアだったそうだが、その後経営企画や事業開発の仕事に従事され、今はNECも出資しているDali Hook Partnersというベンチャーキャピタル(VC)会社に移りそこでGeneral Manager(PDF)をされている。

シリコンバレーのVCのほとんどが集まっているというSand Hill Roadという高台に加藤氏のオフィスもあった。VCというのは、ダイヤモンドの原石のようなビジネスプランやベンチャー企業を見つけ出して、そこに投資家から集めた資金を投入し、その会社を大きくさせることでキャピタルゲインを出す仕組みなわけだが、実はその実態はナゾに包まれている部分が非常に多い。加藤氏はそのシリコンバレーのVCの経営にGeneral Manager(会社によってはPartnerとも言う)として携わる数少ない日本人のうちの一人だ。

その経歴も実績も今のお仕事もすごい加藤氏は、偉ぶることまったくなく、昨日会ったばかりの僕のような若造に対しても、シリコンバレーのVCの仕事の「いろは」から懇切丁寧に教えてくれた。彼曰く、シリコンバレーは「人のネットワーク」が根底にあり、またそれがシリコンバレーの強さだとのこと。シリコンバレーのIT産業やネットビジネスに関わるキーパーソンたちのネットワークに繋がっていれば、良いネタは自然に入ってくるし、そうでないと絶対に入ってこないとのこと。なので、ちょっとしたキッカケでも人の繋がりは大切にしているそうで、だからこそこんな僕との偶然の繋がりも大事にしてくれたのだろう。本当にありがたい限りである。こんなに親切にしてくれた人には、今後どんなに時間がかかっても恩返しをしたいと心から思う。

最後の夜は、金松氏に薦めてもらったホテルの近くのSundanceというステーキハウスに入る。ここのリブステーキは有名だそうで、この日もたくさんの客で店内はいっぱいだったが、僕は運良くあまり待たずにテーブルに着けた。もともと僕はリブはあまり好きじゃないんだけど、ここのリブはそんな僕でもおいしく食べれた。また機会があればぜひ来たい。

■2/18(金)

最終日も朝から雨。9時ごろホテルをチェックアウトし、タクシーでサンフランシスコ空港へ。11時間あまりのフライトを経て、日が変わり2/19の夕方に関空着。

余談だが、帰りの飛行機の中で、映画「Shall We Dance」を見る。言わずもがな、邦画「Shall we ダンス?」の英語リメイク版なわけだが、意外(?)にもかなり良くて、終盤のクライマックスでは迂闊にも泣いてしまった。そのシーンで流れていたPeter Gabrielっぽいバラードソングが耳から離れなくて、気になって家に着いてからネットで調べたら、やっぱりPeter Gabrielだった。曲名は「The Book of Love」。この映画のために書き下ろした新曲だそうだ。彼の憂いのあるバラードは昔から大好きだった。これも僕の涙腺を緩めた原因か。オフィシャルサイトで聴ける(ただし要無料登録)のでぜひお試しあれ。

++++++++++

と、こんな感じのスタンフォード訪問だった。今回は前後にあまりスケジュールの余裕がなく、たった現地3泊の旅だったが、収穫はあまりに大きい。これから集めた情報や資料を整理しつつ、自分のあたまももう一度整理しなおして、いろいろと今後に繋げていきたい。

最後に、現地でお世話になった金松さん。本当にありがとうございました!

Posted by MK @ 04:38 PM
Category : Research



コメント

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おぉ、懐かしいなぁ。
たしか敷地内にHewlett-Packard があるんですよね。

Posted by: marcun= : February 22, 2005 02:54 AM

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marcun殿

懐かしいということは、marcun殿もスタンフォードにお詳しいのでしょうか。ほんと、とっても良いキャンパスでよね。

キャンパス内にはいろんな企業の研究施設があるので、HPのもどこかにあるのでしょうが、今回私は行きませんでした。

サバティカルで行きたいなぁ・・・。

Posted by: kakihara : February 22, 2005 01:02 PM

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Hewlett-Packardはスタンフォードとの産学協同で
成功した世界企業なので記念碑としての本社機能が
確かあるんですよね。

Posted by: marcun : March 22, 2005 03:39 AM

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kakiharaさん

こんにちは。Dali Hook VCの加藤さんのことが書かれていたので投稿しました。私も大変彼にはお世話になった方ものです。本当に素敵な方に出会われましたね。加藤さんの優しさがこういう一面にも見れて嬉しく思いました。

Posted by: followdream : March 1, 2006 12:58 PM

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followdreamさん

はじめまして。コメントありがとうございます。

加藤さんには本当にお世話になりました。ああいう方に出会えたのは本当に幸運以外の何物でもありません。しばらくご挨拶もしていませんが、もしお会いになることなどありましたら、ぜひよろしくお伝えください。

ちなみに、followdreamさん、Outlogicのビジネスインサイト会議に行かれたんですね。私も行こうかと思ったのですが、その日はどうしても関西で予定が入ってしまい行けませんでした。また機会があればお目にかかれるかもしれませんね。

今後ともよろしくお願い致します。

Posted by: kakihara : March 1, 2006 04:10 PM

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スタンフォード大を見学しようと思っている高校生です。大学の近くのホテルを探しています。ホテル名を教えていただけますか?また、観光会社などを教えていただけますか?宜しくお願いします。

Posted by: PG : February 13, 2007 01:47 PM


 
     

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