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September 20, 2005
『Web2.0時代の経営戦略論メモ(2)』
◆ネット広告市場の拡大と古典的ブランディングの無力化 こうしてWeb2.0の世界観が、RSS/ATOMのようなXML技術をもとにブログなどで実感できるようになったり、Amazon Web ServicesやGoogle Map APIの公開などのWebサービスの一般コンシューマー向け展開により、一気に生活実感を伴ってきた。Web2.0の世界観というのは、テクノロジーギークの人たちにしてみれば、既に実現しているお話なのかもしれないが、これが世の中の多くの一般生活者が具体的なサービスとして便益を実感できるかどうかが重要なことなのだ。 あとはこの競争空間に参入してくるプレーヤーが増えれば、この市場はますます活性化する。しかし、ネットビジネス企業の安定的収益確保の苦労はまだまだ大きいものがある。ネットビジネスのスタートアップ企業は、例外なく初期の収益基盤の構築に一番苦労する。 ただ、近年のネット広告市場の膨らみと、それを支える様々なネット広告ツール/サービスの普及は、これからネットビジネスに参入しようとするプレーヤーにとっては朗報だろう。萩原氏@ネットレイティングスやタカヒロ氏@電通とのお話のなかで、ネット広告市場の広がりと可能性についていろいろお話伺ったが、コンテンツやサービスそのものに対する課金がまだまだ難しいなか、今後しばらくは広告収入がネットビジネス企業の収益の根幹を支えていくのは間違いない。 広告収益依存型のビジネスモデルは、得てして旧来型のマスメディア型ビジネスを想像してしまうが、Web2.0時代のネットビジネスにおける広告とは、単に情報の受け皿(ビークル)の情報量とその吸引力の追求ではなく、より一層分散化される情報のトラフィックのなかで、いかに細かくしかし効果的にユーザーに対して情報の露出と浸透をなし得ていくかがカギとなる。 もちろん、Yahoo!のような巨大ポータル型の広告モデルやブランディングは市場規模的には当面主流を形成するだろうが、これも近年よく語られるようになった「ロングテール」の議論に見られるように、市場取引の上位集中の度合いは、ネットビジネスに限って言えば、今後も徐々に下がってくると思われる。それも、グローバルに分散化された情報に対するアクセスする技術とフィルタリングの技術がここ数年で一気に進んだからだ。 古典的な広告やブランディングのアプローチは、そもそも生活者の情報処理能力が低いことを前提に、マスメディアを使って定型化された情報の幅広い露出と継続的な刷り込みを追及してきたが、分散化された情報への効果的アクセスとサービス間のシームレスな連携が実現されるWeb2.0の世界では、そうした人間の情報処理能力のボトルネックから解き放たれた新たなブランディングが実現される可能性が垣間見られる。いや、もしかしたら、Web2.0の世界では、「人の心に対する認知的刻印」という意味におけるブランド概念そのものが通用しないのかもしれない。 そもそもブランドというのは経営の実践の「結果」のようなもので、ブランド構築が目的化してしまっている経営戦略というのは、ネットビジネスにはそぐわないような気がしている。変化の緩やかな市場において既に何かしらのブランド資産といえるものを保有している企業に関しては、その資産の効果的活用を考える必要もあるのだろうが、常に環境変化し続け、新規参入の脅威が大きいネットビジネスの領域において、ブランド資産を溜め込んでいくことを目的にすると、どうしても戦略視座がロングスパンになってしまい、目の前の競争で負けてしまいかねない。 Web1.0/1.5時代の競争環境では、古典的なブランドオリエンテッドなマーケティングや戦略実践が功を奏した面も多々ある。ただ、Yahoo!、Google、Microsoft、eBayなどの強力なブランド力を持つ巨大ネット企業は例外でしかなく、それ以外のネットビジネス企業(特に新規参入を狙う企業)にとって、ブランドオリエンテッドな戦略実践はかえってリスキーではないかという仮説を僕は持っている。 ブランド戦略とは、消費者の情報アクセスや処理能力のボトルネックが大きい状況において、購買意思決定のコストを軽減するために、他者の評価の累積効果としてのブランドに頼るという構造があり、結果としてブランドの自己強化サイクルが出来上がることを前提にしている。「人が良いと言っているんだから良いものに違いない」というわけだ。そして強いブランドはますます強くなる。 しかし、Web2.0の世界では、一般生活者の情報アクセス能力・処理能力が上がり、これまで光の当たらなかったニッチなコンテンツやサービスにも、それが有用だと分かれば自然に手が伸びるようになる。そこには、ユーザー自身による編集(Web2.0風に言えばRemix)によるさらなるサービスの多様性の拡大もある。ブランドという魅惑の幻想に人が群がるのではなく、あるとすれば、ユーザー間のネットワーク効果をベースにした具体的な利便性と編集可能性に人は群がるようになる。そして、そこに人が群がれば、メディアとしての価値が生まれ、広告で収益が出せるようになる。 広告収入に収益基盤を依存しているネットビジネスモデルは、どこか脆弱な印象を与えるところもあるが、僕はネットビジネスはもっと広告に依存しても良いと思っている。メディア全体の広告量を考えれば、まだまだネット広告市場は小さいが(2004年の国内総広告費6兆円弱のうちネット広告は2000億円弱で3.1%(電通調べ))、それでも前年比50%増で急速に拡大している。ネット広告市場が5000億円レベルになれば、サービス提供しながら広告収入でスタートアップ後数年はきちっと食べていけるネット企業がもっともっと出てくるに違いない。そうすれば、その間に他の収益基盤を構築する余裕も生まれ、安定成長・拡大のステージへ進めるネット企業も増えてくるだろう。 しかし、そのような企業のブランディングに対するアプローチは、既にブランド価値を構築したプレーヤーが取るような、情報弱者を食い物にするような「まやかし」のブランディングアプローチ(言い過ぎかな?)ではなく、ユーザー間のネットワーク効果をベースにしたサービス提供と、その結果として生まれるユーザーの集積効果によるメディア価値とその収益化だろう。変化の速いネットの世界におけるブランドとは、所詮過去の証明でしかなく、未来の保証にはなりえない。Web2.0時代のブランドとは、自分の購買決定の動機付けや理由付けなどではなく、「単に好きだから選んだのだ」という素直な誇りのようなものに回帰するのではないだろうか。 これまでのブランディングの考え方やアプローチを全否定するつもりはない。ただ、Web2.0時代のブランディングとは何か、そしてそれを戦略化する枠組みとはどのようなものなのか、一度総ざらいして考え直してみる必要はある。 ・・・『Web2.0時代の経営戦略論メモ(3)』につづく Category : Research |
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