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March 20, 2006
『旅立ちの日、出発の日』

昨日(日付としては一昨日)は大学の卒業式。あいにく朝から雨模様。午後からはかなりの土砂降りになり、艶やかな袴や振袖姿の女子学生たちがとても可哀想だった。けど、そんな天気には関係なく、卒業生にとってみれば、晴れやかな門出の日であることには変わりない。

僕としては、この学校に来て初めて担当したゼミ生、つまりゼミの第1期生をこの日送り出すことになった。僕はいまの大学ではじめて大学教員として働き始めたので、本当の本当に最初のゼミ卒業生になる。当たり前だけど、この感慨深さは言葉では説明のしようもない。

この第1期生たち、本当に個性派ぞろいのユニークな連中だった。彼らは全員僕が面接して採った学生なのだが、選んだ基準は、とにかく「変わったヤツ」ということただ一点。若手の新任教員のゼミなんかを選ぶ学生なんて、そもそもが変わったヤツなんだけど、それに輪をかけて個性的な学生を集めた。一見普通そうに見えても、何かしら他の学生とは違う経験や趣味や指向を持った人間を選んだ。

イマドキの学生、特にうちの大学の学生は、妙にお利巧さんで、行儀が良く、愛想も良く、社交性もあるんだけど、変にこじんまりと収まってしまっている若者が多いように思う。枠からはみ出ることを怖がり、マニュアルを常に求め、すぐに答えを欲しがり、意味もなく群れる。まあ、典型的な現代の若者のステレオタイプなんだけど、3年前にはじめてこの大学に赴任して、今の大学生に初めて接してこのことを少なからず感じたのも事実だ。

僕が所属する学部の履修制度では、2年生の秋学期(後期)のはじめに、3年生・4年生に入るゼミ(正式には「研究演習」という)の選考がある。2年半前に僕が初めて自分のゼミ生を選ぶときに、ゼミでの勉強の内容(つまり僕の専門分野であるIT産業とかネットビジネス)に興味が有るとか無いとか、またそれまでの成績が良いとか悪いとかはまったく考慮しなかった。さらには、このゼミに対する志望度合いもどうでも良かった。その代わり、上記したように、何かしらの点でトンがった学生を集めたかった。学校や社会や大人が用意した「枠」をどこか窮屈に思っているか、もしくは気にも留めないようなヤツが欲しかった。

そうして選んだ20人の若者達。自分で選んでおいて言うのもなんだが、本当に群れない個性的な人間ばかりだった。

そんな彼らには、周りと協調することの大切さを教える前に、周りに埋もれない個性を強く持つことの大切さを先に教えた。「我々の間にチームプレーなどという都合のいい言い訳は存在しない。あるのはスタンドプレーの結果として生じるチームワークだけだ」なんて言う、分かる人にしか分からない台詞なんか用いながら(笑)。まとめ役のゼミ長も敢えて置かなかった。

さらに、第1期生だからこそ、それまで誰も足を踏み入れたことのない道無き荒野を自力で切り拓くことの意味と意義を常に説いてきた。ある意味、担当教員としての責任の放棄とも言えるくらい、ゼミの活動内容をすべてゼミ生自身に企画・運営・管理させた。人から与えられることに慣れきっているいまの若者にはツライし、僕自身にとっても時間もストレスもかかるやり方だってことは百も承知だった。けど、それでも彼ら自身に考えさせ、彼らのやりたいようにやらせた。手を抜き始めたら時折軽く喝を入れたりはしたけど(笑)。

そして、こんな先の読めない時代だからこそ、「自分の頭で考える」ことの大切さを伝えてきた。「答えなんて用意されてないし、誰も用意してくれない。自分で創るしかないんだよ」と言い続けてきた。世の中の事象や様々な言説に対して、そのまま鵜呑みにせず、自分の「ものさし」で自分なりに考える。答えに到達する早さより、答えに到達するまでの論理や筋道の大切さを説いた。

こんな僕のゼミの教育方針に、彼らは幾度となく驚き、不安になり、僕自身に対する不信さえ抱いたことだと思う。かく言う僕自身、まさに手探りのゼミ運営のなかで、幾度となく迷い戸惑いながら、このゼミ生20名と共に歩んできた。そして、個性派揃いの彼らが、僕の想像を大きく超えるほどまとまり、一致団結し、成果をあげてくれた。これほどゼミ生同士が仲の良いゼミも珍しいだろう。

しかし、彼らに対する僕のそんな教育方針は正しかったのだろうか、それとも間違っていたのだろうか。もっと社会や組織に順応することの大切さを説いたほうが良かったのだろうか。もっと人と協調することを先に教えるべきだったのだろうか。与えられた課題を人並み以上にこなす要領の良さをもっと身に付けさせるべきだったのだろうか。

すべてそれも彼らの今後の人生そのものがが証明してくれるのだろう。旅立っていく20名のゼミ生。いまは不思議と寂しさは湧いてこない。しかし、来月から新学期が始まり、彼らのいない学校で仕事をしながら、じわりじわりと込み上げてくるのだろう。

いまはただ、彼らの旅立ち、新たな人生のステージへの出発を、心よりお祝いしたい気持ち、それだけである。

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愛して止まないゼミ第1期生の皆さんへ

ご卒業おめでとうございます。これまでの大学生活4年間、そしてゼミでの2年半、本当にお疲れさまでした。

皆さんに対しては、たくさんの感謝とお詫びの気持ちでいっぱいです。僕のような新米教員のゼミ、歴史も実績も先輩も完全にゼロのこのゼミに入ってくれてありがとう。けど、初めて担当するゼミということで、教員として至らないことが多々あったこと、ごめんなさい。それでも、このゼミで精一杯のことをやってくれて、精一杯楽しんでくれてありがとう。けど、もっと僕が丁寧にいろんなことを教えてあげられていたら、もっともっといろんな勉強や経験をさせてあげられたかもしれなかったこと、ごめんなさい。

このゼミは「柿原ゼミ」でもなんでもなく、皆さん一人一人が作り上げた皆さん自身のゼミです。このゼミで経験した様々なことが、今後皆さんが生きるうえでのちょっとした支えや道標になってくれるのであれば、これほど嬉しいことはありません。そして、このゼミで育まれた皆さん同士の友情が、皆さんを今後も暖かく包み込むものであることを心より祈っています。

卒業後、別に皆さんに社会で活躍してもらいたいなんて思ってないです(してくれても構いませんが(笑))。人に自慢できる人生を送って欲しいとも思いません(してくれても構いませんが(笑))。それ以上に、自分自身に正直で、自分自身を褒めてあげられるような、自分自身に誇らしい人生を、自分自身のペースで歩んでいってください。

今後皆さんは、さまざまな進路に進みます。多くが地理的にも離れ離れになってしまいます。しかし、いくら地理的に離れていようとも、インターネットは皆さん同士、そして皆さんと私をいつでもどこでも必ず繋いでくれることでしょう。Face-to-faceではなかなか逢いにくくなりますが、これからはinternet-mediatedなかたちでもっともっと逢えるようになるかもしれません。もしかしたら、これまでは実感できなかったようなインターネットの可能性を、これから身を持って体験できるかもしれませんね。

皆さんとの本当の意味でのお付き合いとは、実はこれから始まるのでしょう。今後とも末永くよろしくお願いします。このサイトを訪れてくれれば、僕はいつでもそこにいます。相変わらずブログはあんまり更新してないかも知れませんが(笑)。

皆さんの大いなる前途を祝し、このブログエントリーを捧げます。ご卒業、本当におめでとうございます。

柿原正郎

Posted by MK @ 03:27 AM
Category : Teaching



コメント

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2年間本当にありがとうございました☆

正直に言うと、「なんでも自分でやらないとあかんゼミ」って感じでツライな~と思うこともありました。俺にはこのゼミ選んだの間違いかな~とか思ったりもしたことありました。

でも、自分の選択がよかったか悪かったかなんてその時はわからないんですよね。あとから振り返ってみて初めてそれがよかったかどうかが分かるんですよね。

今は本当によかったと思ってます。あの時苦労してよかったと思ってます。先生のゼミ選んでよかったと思ってます。

俺はすぐに小さくきれいにまとまろうとしてしまうんですよ。ゼミ生の中ではそれがかなり強い方だと思います。

でもこのゼミに入って、ゼミ生と出会えて、先生と出会えて、キレイにまとまろうとする自分の殻に少しずつヒビが入った気がします。

本当に新しいことばっかりで大変やったけど、飽きなくて、退屈しないゼミでした。

本当にありがとうございました。

社会人になったら頻繁に会うことはできなくなりますけど、これからも宜しくお願いします。


Posted by: k460 : March 21, 2006 02:20 AM

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先生には何度も言いましたが、本当にお世話になりました。

先生がゼミの信念とか、どういうメンバーを集めたかを語るたびに、『私は違う・・・』と悩みました。

先生の期待に応えられない自分をずっと歯がゆく思い、『期待に応えられない』と考える時点で、先生の望むゼミ生では無い、と考え、そしてその次には『ああ、また先生の評価を気にしてしまった!!』と考えてしまう・・・
こんな自分は、ここにはいちゃいけないんじゃないか・・・とゼミをやめる事を真剣に考えたこともありました。

けど、それは逃げでしかない!ゼミをやめることは、先生から逃げること。先生に負けることだ!!っていう風に思考は流れ

『カッキーには負けたくない!』って思うようになりました。

負けるも何も、教授と生徒で勝負なんてするはずも無いのに、なぜかそう考えてしまって、対抗意識バリバリでした(笑)

他のゼミ生達にも実は対抗意識がありまくりで、皆が何か発表するたびに『絶対フィードバックしてやる!』と思ってメッチャ睨みを利かせながら発表聞いてましたね。
『何にも言えなかったら私の負け、言えたら引き分け』
『私の発表で、誰か食いついたら私の勝ち、来なかったら負け』みたいな自分ルールがあって、しょっちゅう負け続けで悔しい思いをしてましたw

途中で、『ええーーい、もう知るか!!』って気分になって、『先生も・ゼミ生も気にしない!』ってなってからは、不思議とゼミの時間を楽しみにできるようになりました。

先生に言われたアドバイス、どれも忘れません!自分に自信もって、カッコイイ大人になってまた会いに行きますね☆
そうなる前にも、きっと会いに行きますね★

Posted by: maiko : March 21, 2006 02:47 PM

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僕はこの一家の一員であれたことを誇りに思い、これからの長い人生を生きていくつもりです。

この一家の一員になり、素敵な先生、素敵な仲間に出会えたことは、僕の大学生活を大変意味のあるものにしてくれました。

この二年半は周りにお世話になりまくりだったので、これからはちょっとずつ返していこうと思ってます。ちょっとずつ。

最後までダラダラと怠け物の僕を、最後まで暖かい眼で見守っていただきほんまにありがとうございました。

うまい酒飲みにいけることを楽しみにしています。

Posted by: 今日も飲んでます : March 22, 2006 03:09 AM


 
     

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