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August 26, 2007
『音楽の境界の融解と変わらない自分:元気ロケッツ』

僕の今年の夏は音楽漬けの毎日だ。こんなに音楽にどっぷりはまるのは何年ぶりだろう。中学から大学まではまさに「No music, no life!」って感じだったのだが、働き始めてから音楽に触れる時間は一気に減っていまに至っていた。そんなわけで、ヘタすりゃ10年ぶりぐらいのMy音楽ブームである。

そんな勢いもあって、前のエントリーではPerfumeを紹介してみたわけだが、もうひとついま僕のスーパーヘビーローテーションとなっているものを紹介したい。単に気に入っているだけでなく、大げさに言えば「音楽」というもの境界を深く考えさせられる事例となっている。

それは「元気ロケッツ」というユニットである。

"Heavenly Star" by Genki Rockets


超爽やかなハウスダンスチューンということだけで僕のストライクゾーンど真ん中なわけだが、このユニットの背景がますます面白い。関連情報はウェブでいろいろ見つかるので、ここでは簡単に紹介したい。詳細は、この紹介記事などを参照してもらいたい。

この曲は、2006年11月に欧米で先行リリース(国内は2007年2月)されたPSP用ゲームソフト「ルミネスII」に収録されたゲーム音楽である。そのゲームのリリース前である2006年9月11日にPVがYoutubeMyspaceで配信されるやいなやいきなり大きな話題となり、その後様々なRemixバージョンも出され、iTunesのダンスカテゴリーではいまでも上位にランクインしている(2007月8月現在)。ちなみに、歌っている女の子は「宇宙で生まれ育ち、30年後に17才になるLUMI」という子だそうだ。宇宙ものSF好きのオッサンとしてはたまらない設定である。

圧巻なのは、先日2007年7月7月に世界同時開催された地球温暖化防止キャンペーンライブ「Live Earth」の幕張会場で、3Dホログラムでオープニングアクトを務めた映像である。こちらもネットで公開されているのですべて見ることができる。うーん、まさにレイア姫(若い人たちは分かるかなぁ)。

Live Earth_20070707_Genki Rockets_Live_originalA
Live Earth_20070707_Genki Rockets_Live_originalB
Live Earth_20070707_Genki Rockets_Live_originalC

音楽のPVやライブ映像は通常は著作権の関係でYoutubeなどでネット配信することには大きな障害がある。しかし、この元気ロケッツのPVやライブ映像はそもそもネットで配信されるの前提にしている。これは著作権はどのように処理しているのだろうか? Creative Commonsだろうか。(詳しい人教えてください)

ネット配信を活用して口コミでプロモーションを仕掛けるアプローチは、これまでもさまざまなアーティストやレーベルによってされてきた。しかし、この元気ロケッツの場合は、さまざまな点が異なる。

まず、もともとの出自が音楽業界でなく、ゲーム業界であること(元気ロケッツのプロデューサーは著名ゲームクリエーターの水口哲也氏)。さらには、アーティストや曲自体のプロモーションが当初の主目的ではなく、PVの評判がネットで広がって結果としてアーティストや曲が立ってきたという経緯。また、それがLive Earthのような他の大きなイベントと絡んで、さらに大きな話題となっていること。ちなみに、Live Earthとの連動は元気ロケッツの当初の企画のなかには含まれていなかったと思うが、もしこれが計画通りなのだとしたら、本当にビックリ且つ拍手喝采の嵐である。

というわけで、この元気ロケッツの事例は、これまでの音楽ビジネスの枠をあまりに大きく飛び出してしまっている。しかし、結果としては、しっかりと音楽ビジネスになっている。これは音楽ビジネス、特にネットとの絡みでそれを考える際に、大きな示唆をもたらす。

いま音楽ビジネスで起こっている地殻変動は、端的に言えば「メディアの変化」×「チャネルの変化」ということにつきる。

「メディアの変化」とは、音楽というコンテンツがのっかる器(媒体)が大きく広がって行っていることである。レコードに始まり、テープ、CD、DAT、DVD、など物理メディアも大きく変化してきたが、音楽や映像のネット配信、ケータイの着メロ/着うた(フル)など、デジタルメディアとしても急速に拡大し続けている。

これに重なるように「チャネルの変化」が同時並行で進んでいる。チャネルとは音楽コンテンツを売る(ユーザーが買う)場の変化のことである。レコード/CD店だけでなく、レンタルショップ、ネット、ケータイなど、様々な場所で僕らは音楽に触れ、それを購入することができる。

この「メディアとチャネルの同時変化」が既存の音楽業界を大きく揺さぶらないはずはない。

同様の歴史を経てきた業界に、ビール業界がある。30年ほど前はビールは「酒屋さんから届けられる瓶ビール」で楽しむものだった。まさにサザエさんの世界である。しかし、80年代後半から急速にビールの「メディア」と「チャネル」が変化した。言わずもがな、「瓶→缶」というメディア(器)の変化と、「酒屋→量販店」というチャネル(売り場)の変化である。それまで市場シェアの6割超を押さえていた圧倒的リーダーのキリンは、その地殻変動の対応が遅れ急速にシェアを落とし、シェアトップの座をアサヒに明け渡したのである。このビール業界の事例を見ても、「メディアとチャネルの同時変化」がもたらすインパクトの大きさが容易に想像できるだろう。

音楽というかたちのないものを、著作権で保護しつつレコードやCDという物理メディアに載せることでモノ経済の中で商品として取引・流通させることで、アーティスト、音楽レーベル、ユーザーの相互満足を作り出してきた音楽業界。こうしたビジネスの仕組みを「時代遅れ」というつもりはさらさらない。生み出されるビジネスのボリュームを考えれば、少なくとも今後10年くらいはこの仕組みが有効且つ必要なものであることは明白だ。

しかし、「その先」、また「その先の先」を考えれば、事態は急速に不透明になる。メディアとチャネルの同時並行的な変化のなかで、音楽の(広い意味での)消費形態が大きく変わろうとしているなか、現在の音楽業界の構造やビジネスの仕組みは否応なく変わらざるを得ない。それは、いま僕たちが念頭においている「音楽」というものの境界そのものが変わってしまうかもしれないのである。

もともと音楽業界はテレビや映画などの映像系の業界との結びつきは強いが、今ではそこにゲームやネットサービスという業界も大きく絡みながら音楽業界に食い込んできている。映像・音楽・ゲーム・テキストをすべて含む国内コンテンツ産業の市場規模は2006年で14兆円である(デジタルコンテンツ協会調べ[PDF])。これら4つのコンテンツ領域がいま密接に絡みながらそれぞれ蠢いている状況だ。

今回の元気ロケッツの事例は、そのことを少なからず垣間見せてくれている。もともとのゲーム内音楽の企画ユニットという範疇を大きく飛び越えて、いまでは単体の音楽ビジネスとしても完全に成立している。さらにその成功にはYoutubeやMyspaceなどのネットサービスが密接に絡んでいる。ネット音楽配信サービスやSNSがかなり世の中に普及したこの現在だからこそ、元気ロケッツのブレイクが発生し得たわけである。こうなると、どこからどこまでが音楽ビジネスなのか、本当に分からなくなってくる。

ただ、こうした音楽の境界領域が他の様々な領域と浸食し合っている産業構造の巨大な変化のなかで、何か変わらないこともあるはずだ。それは、ユーザーの音楽を楽しむ姿勢や心ではないだろうかとふと思った。

僕はいまiPodで音楽を聴いたりYoutubeでPVを見たりしているわけだが、現在のこの僕の音楽とのふれあい方は、10年以上前にレコードやテープで音楽を聴いていた頃と比べて、何か変わったかと言えば変わっていないのではないかと思ったりするわけだ。スピーカーやイヤフォンから流れてくる音楽によって元気づけられたり癒されたりしている自分は、今も昔もまったく同じではないか。

そう思うと、この大きな産業変化も、一生活者にしてみれば、さして大きな変化でもないのかもしれない。音楽のメディアやチャネルが変わり、業界やビジネスの境界がいかに変わろうとも、音楽を聴いている自分は20年前も10年前も今も何も変わらないのだから。そう考えると、何とも言えず軽やかな気持ちになるのは僕だけだろうか。

そんな思いを馳せながら、宇宙から届けられた(笑)この曲に心癒される夏の週末の午後です。前回のPerfumeに引き続き、この元気ロケッツも個人的に超プッシュさせて頂きます。ぜひ聴いてみてください!!


Posted by MK @ 12:46 PM
Category : E-biz news



コメント

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そんな時代に新聞と同時に新作CDを無料配布してしまうPrinceという人は時代を超越しきってる気がいたしました。

Posted by: Yoshinaga : August 28, 2007 11:15 PM

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まったくもって同感。彼は時代の先を行き過ぎ。

Posted by: kakihara : August 29, 2007 12:22 AM


 
     

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