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February 21, 2005
『Claudio Ciborra 1951-2005』

珍しく連日のエントリーだが、このことはやはり触れておかないと僕の気持ちが落ち着かないので、書いておく。

スタンフォードに出張する直前に前触れ無く入ったメールだった。僕が留学していた先でお世話になったProf. Claudio Ciborra(クラウディオ・チボラ)が2/13に彼の故郷であるミラノで亡くなったという知らせだった。享年53歳。あまりに早い別れだ。

Claudioは、僕が留学していたLondon School of EconomicsDepartment of Information SystemsのConvener(学科長)を2000年から務めていた。僕は1999年から2003年までこの学科に在籍していたので、彼がConvenerとなった後の彼の手腕による変化や功績をよく知っている。彼がConvenerになってから、学科は大きく様変わりし、たくさんの新しい試みが実行に移された。そして、その多くは大きな成果を上げ、Claudioの評価をさらに上げることとなった。

Claudioはいろんな意味で「アンビバレント」な人間だった。Information Systems分野の研究者としての彼の名前を一躍有名にしたのは、取引費用の経済学理論を情報システム分野に大胆に取り入れた実証分析で、それまでの情報システムの構築手法や組織へのインパクト分析の枠組みに新たな地平を拓いたことだった。しかし、1990年代後半以降の彼は、一気に難解な形而上の世界へと研究の針路を採り、情報とは何か、その情報を扱う人間の存在とは何かという哲学的な問いに向き合い続けた。そうした彼の「転向」に違和感を感じていた同僚や研究者仲間は少なくなかった。

彼は背が高く、とてもオシャレなイタリア人で、いつもちょっと斜に構えた雰囲気には独特のものがあった。現代のパワーポイント全盛の講義のなか、彼の講義スタイルは、マジック一つ持って教室に現れ、強いイタリア訛りで訥々と話し始めて、細かい字でホワイトボートにコチョコチョと要点を書くだけのものだった。それは、彼の取っ付きにくい雰囲気やシニカルな口調に加えて、本当に学生泣かせの講義だった。しかし、そんな彼がフラッと学科主催のパーティーに現れて、学生と気さくに話したり、ダンスミュージックに合わせて学生たちと一緒に楽しそうに踊ったりするフランクなところもあった。

彼はある意味とても正直な人で、学会や研究会などでも、発表者がどんなに大物だろうとも、自分の考えと違うところは鋭く問い詰めたりする激しいところがあった。そういった彼の正直さは、一部の研究者からは「無礼だ」とか「変人だ」とか思われたりしていたようだ。その一方で、博士課程の学生だった僕などが、研究テーマのことで恐る恐る彼の意見を求めに研究室に行ったりすると、とてもやさしく丁寧に意見を述べてくれて、最後には励ましの言葉などもかけてくれたりする暖かさも持ち合わせていた。

大抵の人はそんな彼のアンビバレントな人格に戸惑いながらも、どこか憎めない、どこか愛嬌のある彼の魅力に引き寄せられていた。そんな彼が死んだ。

彼とは、昨年後半に彼が編著者の一人になっている本の翻訳の相談をメールで頻繁にしていた。僕がこの翻訳の話を持ちかけたとき、3人いる編著者のなかで真っ先に「I think this is a great idea and opportunity!」と返事をしてくれたのが彼だった。その後10月あたりに彼が病気で入院しているということを聞き、翻訳の話も少し遅れることとなった。結局、翻訳契約は年内には固まらず、年を越すこととなったのだが、いま思えば、もっと早く彼に話を持ちかけて、もっと早く話を進めていれば・・・と思うと、悔やんでも悔やみきれない。

僕は、ある意味幸せなことなのかも知れないが、これまで親族や知人・友人が死ぬということをまったくと言ってよいほど経験していない。そのためか、今回、大変お世話にもなり、しかも今まさに仕事を一緒に進めていたClaudioの死は、言葉では表せない重石として僕にのしかかってくる。

Claudioのあまりに早い死を受け入れるのはまだ少し難しいところが僕にはあるが、彼との最後の仕事になった翻訳を仕上げることが、少しでも彼の弔いになるのではないかという微かな希望を胸に、今は粛々とその仕事に励むほかない。

May his soul rest in peace and silence.

Posted by MK @ 05:28 PM
Category : Research
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February 20, 2005
『スタンフォード訪問』

昨日仕事で行っていたスタンフォードから戻ってまいりました。現地でたった3泊の訪問だったけど、収穫があまりに多すぎてビックリしているくらい。

今回のメインの目的は、僕も参加している宝塚都市再生プロジェクトの一環で、アート・エンターテイメント・メディア研究に関する産学連携の海外事例の視察ということで、スタンフォード大学のMedia Xという産学連携研究ネットワークを視察すること。昨年の11月にこのMedia Xの日本対応コーディネーターの金松洋子氏に大阪でお目にかかり、そのときにも金松氏に「実際にスタンフォードに伺えればいいなぁと思っておりますぅ」なんてことを言っていたのだが、思ったよりも早く今回実現した。

僕はスタンフォード大学に訪れるのは今回が初めてということもあって、はじめからいろんな意味で期待大の訪問だった。スタンフォード大学と言えばシリコンバレー、シリコンバレーと言えばスタンフォード大学というくらい、この両者の関係は深い。僕もIT産業やネットビジネスのことを研究したり教えていたりするのに、一度もシリコンバレーを訪れたことがないことは僕自身ちょっと気になっていたわけで、それが今回仕事を絡めてこのようなかたちで訪問することができ、まさにパーフェクトといった感じ。

以下、このスタンフォードでの4日間の僕の動きを簡単に記してみたい。

■2/15(火)

関空を発ち、現地の朝8時半にサンフランシスコ国際空港に到着。この日はあいにくの雨。すぐにタクシーに乗り、スタンフォード大学があるパロアルトに向かう。ホテルは大学のキャンパスのすぐそばにあるものを予約しておいたので、まずはそちらに向かう。空港から40分ほどでホテル到着、荷物を置いてまずは金松氏に連絡を取り、車でひろってもらう。

まずは昨年の11月にも大阪であったMedia XのExecutive DirectorのProf. Keith Devlinにご挨拶に。彼は今回の僕の訪問のコーディネートをしてくれて、僕が話しを聞きたいと思っていた何人かの先生にとても親切に繋いでくれた。Keithと金松氏と僕でランチを取りながら、Media Xの現状や様々な活動についてお話を伺った。

13時に今回最初のアポイントメントのProf. Pamela Hindsに会いに行く。Pamelaは今回のMedia X訪問とは関係なくとも、ぜひ一度会いたいと以前から思っていた研究者だった。というのも、彼女の研究は僕の研究関心と極めて近く、僕の博士研究にもとても強い影響を与えていたからだ。今回実際に会ってみて、とっても感じのよい女性で、Media Xの枠組みのなかで現在進めている研究について詳しく教えてくれた。

14時には2つ目のアポイントメントとしてProf. Cliff Nassと会う予定だった。しかし、Cliffが突然の病気でキャンセルになってしまった。Cliffは「Media Equation(邦訳:『人はなぜコンピューターを人間として扱うか―「メディアの等式」の心理学』)の著者の一人で、日本でも著名なコミュニケーション学の研究者なので、今回会えるのをとても楽しみにしていたので、とっても残念。

アポが一つ空いたので、Keithと金松氏がベースとしているCLSI (Center for the Study of Language and Information)に立ち寄らせてもらった。そこでちょうど火曜日の15時に開いているというセンター内のティーパーティーに参加させてもらい、そこでCLSIのいろんな研究者とおしゃべりさせてもらった。なかでも、Prof. Pat Langleyとは結構長くお話させてもらった。後から金松氏に聞いたのだが、PatはComputer Learningの分野ではとっても有名な方だそうで、その筋では「神様」的な存在だとか。こんな研究者がゴロゴロいるのがスタンフォードのすごさだろう。しかし、彼の超早口には閉口。

時差ぼけの体と脳味噌に鞭打ち、17時からは、CNetのBlogで有名な梅田望夫氏に会いに行く。梅田氏とは面識が無かったのだが、常々Blogを拝見していて一度お話したいなぁと思っていたので、不躾にもメールを送ってみたところ打ち合わせを快諾してくださった。梅田氏のオフィスはスタンフォード大のすぐ近くにあるので、金松氏に車で送ってもらった。シリコンバレーで長くビジネスをされている梅田氏に、最近のシリコンバレーやその他ITベンチャーの動きなどについて詳しくお話を聞かせてもらった。僕のどんな質問にも梅田氏からとても鋭く且つ明快な答えがズバズバ返ってくるので、とても刺激的だった。

その後、ホテル近くの中華料理屋で金松氏と軽く夕食をとってからホテルに戻り、そのままバタンキュー。

■2/16(水)

2日目は晴れ。この日最初のアポは、11時にDr. Renate Fruchterと打ち合わせ。RenateはCivil Engineering Departmentの研究者だが、Media X関係でGlobal Project TeamやConcurrent Engineeringに関する非常に興味深い研究をしている。彼女はルーマニア人だそうで、ゆっくりとした口調でひとつひとつしっかりと話をしてくれて、とても誠実な対応をして頂いた。彼女の強さは、Engineeringの軸がしっかりあると同時に、Social Scienceのアプローチも研究に柔軟に取り入れている懐の深さだろう。

午後は大学のキャンパスをぶらぶら散歩しながら、大学のBookstoreに立ち寄ってみた。さぞかし品揃えの良い本屋なんだろうなぁと期待して入ったのだけど、正直たいしたことはなかった。結局2冊仕入れただけ。

以下は散歩中にキャンパス内で撮ったいくつかの写真。

Main QuadからPalm Streetを臨む

訪問したコミュニケーション学部がある建物

有名なHoover Tower

壁画が美しいChurch


夕方以降はもともと予定が入っていなかったのだが、金松氏が気を利かせてくれて、Squire, Sanders & Dempsey, L.L.P.という弁護士事務所に所属している日本人弁護士の下田範幸氏たちが主催するカリフォルニア州の日本企業向けの法律セミナーに誘ってくれた。このセミナーはすでに1年以上続いている連続セミナーで、今回のテーマは"Doing Business in CA: Legal Issues regarding Product Distribution"というもの。物品取引における日本とアメリカ(特に加州)の法律の違いについて詳しい説明があり、法律には素人の僕でも「ほっほー」というようなことを色々教えてもらった。

そのセミナーが終わったあとで、ワインと軽食が出る軽い懇親会があったのだが、そこでセミナーに参加していたいろんな日本人のビジネスマン/ウーマンの方々ともお話できて、とても楽しかった。そこでお話した方の一人で、NEC(日本電気)のアメリカ支社で長らく働かれて、いまはシリコンバレーのベンチャーキャピタル会社でGeneral Managerをされているという加藤晴洋氏と会話がはずんで、「もしよろしければ明日オフィスに来ませんか」とお誘いを受けた。もちろん断る理由もなく、次の日のアポが一つ増えた。

■2/17(木)

3日目は曇り後雨。この日はまず9時にProf. Jeremy Bailensonに会う。Jeremyは昨年11月の大阪でのMedia Xのイベントで来日していたときにも会っていたので、3ヶ月ぶりの再会となる。JeremyはもともとはSocial Psychologistなのだが、Virtual Reality(VR)の技術を様々な仕事の現場に応用する研究/実験をしており、昨年の彼のプレゼンテーションに非常に興味を持った僕は、今回彼のラボを訪ねさせてもらった。

ヘッドギアに見えるVRの世界を単なるエンターテイメント的な活用ではなく、より実践的な仕事の文脈での活用(例えば、警察の被疑者取調べなど)を目指して、彼のラボでは様々な実験と研究を進めている。今回僕もヘッドギアを着けて実際にVRの世界を体験させてもらった。一昔前のVRとは異なり、非常にスムーズな動きでグラフィックもかなり精密だった。もちろんまだまだ様々な限界もあることも事実だが、ゲームなどより目的を明確にした仕事の文脈のほうがいろんな活用の可能性があるのだと思った。

彼とはかなりフランクに話をしたので、他にもいろんなことを聞けた。授業は週1~2コマ、1年の半分は研究に使える。その分、研究成果に対するプレッシャーがとてつもなく大きいとのこと。成果を質・量ともに出さなければ「テニュア(終身在職権)」を取れないので、良い研究をしないと5~6年で放り出されることになる。けど、そうした研究のプレッシャーは大きいが、研究者としてスタンフォードで働けることはとても幸せだと言っていた。

お昼は大学の敷地内にあるStanford Shopping Centerに立ち寄って、ちょっと買い物をしつつお昼を食べる。15時には前日に急に決まった加藤晴洋氏との打ち合わせ。加藤氏は、もともとNECのエンジニアだったそうだが、その後経営企画や事業開発の仕事に従事され、今はNECも出資しているDali Hook Partnersというベンチャーキャピタル(VC)会社に移りそこでGeneral Manager(PDF)をされている。

シリコンバレーのVCのほとんどが集まっているというSand Hill Roadという高台に加藤氏のオフィスもあった。VCというのは、ダイヤモンドの原石のようなビジネスプランやベンチャー企業を見つけ出して、そこに投資家から集めた資金を投入し、その会社を大きくさせることでキャピタルゲインを出す仕組みなわけだが、実はその実態はナゾに包まれている部分が非常に多い。加藤氏はそのシリコンバレーのVCの経営にGeneral Manager(会社によってはPartnerとも言う)として携わる数少ない日本人のうちの一人だ。

その経歴も実績も今のお仕事もすごい加藤氏は、偉ぶることまったくなく、昨日会ったばかりの僕のような若造に対しても、シリコンバレーのVCの仕事の「いろは」から懇切丁寧に教えてくれた。彼曰く、シリコンバレーは「人のネットワーク」が根底にあり、またそれがシリコンバレーの強さだとのこと。シリコンバレーのIT産業やネットビジネスに関わるキーパーソンたちのネットワークに繋がっていれば、良いネタは自然に入ってくるし、そうでないと絶対に入ってこないとのこと。なので、ちょっとしたキッカケでも人の繋がりは大切にしているそうで、だからこそこんな僕との偶然の繋がりも大事にしてくれたのだろう。本当にありがたい限りである。こんなに親切にしてくれた人には、今後どんなに時間がかかっても恩返しをしたいと心から思う。

最後の夜は、金松氏に薦めてもらったホテルの近くのSundanceというステーキハウスに入る。ここのリブステーキは有名だそうで、この日もたくさんの客で店内はいっぱいだったが、僕は運良くあまり待たずにテーブルに着けた。もともと僕はリブはあまり好きじゃないんだけど、ここのリブはそんな僕でもおいしく食べれた。また機会があればぜひ来たい。

■2/18(金)

最終日も朝から雨。9時ごろホテルをチェックアウトし、タクシーでサンフランシスコ空港へ。11時間あまりのフライトを経て、日が変わり2/19の夕方に関空着。

余談だが、帰りの飛行機の中で、映画「Shall We Dance」を見る。言わずもがな、邦画「Shall we ダンス?」の英語リメイク版なわけだが、意外(?)にもかなり良くて、終盤のクライマックスでは迂闊にも泣いてしまった。そのシーンで流れていたPeter Gabrielっぽいバラードソングが耳から離れなくて、気になって家に着いてからネットで調べたら、やっぱりPeter Gabrielだった。曲名は「The Book of Love」。この映画のために書き下ろした新曲だそうだ。彼の憂いのあるバラードは昔から大好きだった。これも僕の涙腺を緩めた原因か。オフィシャルサイトで聴ける(ただし要無料登録)のでぜひお試しあれ。

++++++++++

と、こんな感じのスタンフォード訪問だった。今回は前後にあまりスケジュールの余裕がなく、たった現地3泊の旅だったが、収穫はあまりに大きい。これから集めた情報や資料を整理しつつ、自分のあたまももう一度整理しなおして、いろいろと今後に繋げていきたい。

最後に、現地でお世話になった金松さん。本当にありがとうございました!

Posted by MK @ 04:38 PM
Category : Research
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February 11, 2005
『OL社長、団塊ジュニア、そしてショートヘア』

タカヒロさんのBlog経由で、ケータイ会社のドコモの社内ベンチャーから生まれた女性ターゲットのマーケティング会社があることを知った。

その会社のシャチョーさんはなんと「OL社長」だそうな。26歳の女性ドコモ社員が、ドコモからの出資を受け、しかし籍はドコモに残したままこの会社を作ったそうだ。自らを「OL社長」と名づけ、いま流行り(?)の社長Blogで素に近い自分の言葉でいろいろ語ってくれている。

F1層(20~34歳の女性層)にフォーカスして各種サービスビジネスを展開しようとする会社は他にもあるけど、僕的には「フ~ン」て感じ。批判しているのではなく、正直よく分からないということ。

確かに現在のこの層は、ケータイの爆発的普及のプロセスを中学・高校・大学の時代に体験しており、それ以前の世代とは異なるコミュニケーションパターンを有しているという仮説を持つことはできる。ただ、そこには年代効果とコーホート(世代)効果が入り混じっていることは言うまでも無く、現代のF1層の消費特性が、F1という年代に帰着するのか、1971~1985年生まれの女性というコーホートに帰着するのかの判断は難しい。そうしたことを考えて、あえてF1という層にターゲティングしたビジネスモデル構築が成立するのか、またそれを調査・分析・支援するようなマーケティング・サービスが成立するのか、これまた判断が難しい。

僕の前の仕事で、僕自身が「団塊ジュニア」世代ということもあり、団塊ジュニア層の消費特性を分析するという仕事を結構やらされた。というのも、90年代後半、バブル崩壊後の景気低迷から抜け出すチャンスを、人口ボリュームゾーンであるこの団塊ジュニアの攻略に見出そうとしていた消費財メーカーが多かったからだ。団塊ジュニア向けドリンク、団塊ジュニア向け化粧品、団塊ジュニア向け自動車、etc.。

当時存在した関連データを集められるだけ集めていろいろ調べた結果、団塊ジュニアの消費特性を僕は「編集消費」と名づけて分析した。内容を端的に言えば、モノ溢れの時代のなか成長してきた団塊ジュニア世代は、複数の商品・サービスの付加価値の上澄みを軽妙に組み合わせながら、自分なりの効用を得ようとしている世代であり、その結果としてこの世代の嗜好は細分化、蛸壺化し、何かしらの1つの商品・サービスのマーケティング・ターゲットとしてこの世代をひとかたまりに捉えようとするのは難しく且つ危険である、というものだった(ような気がする)。内容は、松岡正剛氏により広められた「編集」概念と酷似しているのだが、僕がこの仕事をしていたのは松岡氏がそんなことを言いだす前で、僕的にはちょっとした記念碑的仕事としての思い出ぶかいところがある。

10年近く前にやった僕のこの古い仕事がいまの年代・世代分析に参照可能なのかはよく分からないが、こうした年代別・世代別のターゲッティング先行マーケティングが、新たな商品・サービスを生み出すきっかけとなることには、個人的にはちょっと懐疑的になってしまう。最近でも、団塊ジュニアをターゲットにしたフリーペーパー「R25」が注目を集めていたりするが、他の人もいろいろ言っていることだが(例えばこことか)、この世代をまるごとターゲッティングすることにどれだけの面白さと商業的価値があるのかどうかといえば、僕はどうしても「ムムムッ・・・?」と唸ってしまう。

とかなんとか色々書いたが、この若いOL社長さんには、僕のこうした疑念がスカッと晴れるように頑張って頂きたいと思うので、今後の活躍に注目していきたいと思う。

と、ここで今回のエントリーを閉めるはずだったのだが、このOL社長のBlogで最後にこんなエントリーをふと見つけてしまい、「なんじゃこりゃ~ぁぁぁ!?!?!?」とジーパンばりに叫んでしまった。そのエントリーとは、

「ショートヘアが好き」っていう男は要注意

だって・・・。わたくし・・・、ショートヘアの女性、大好きですが何か? こんな刺激的な内容も書いてある。

なので「ショートヘアがスキ」っていう男性は、男として自分に自信が無いってこと。(中略) 他にも、「ボーイッシュな子が好き」、「未熟な子が好き」、「地味な子が好き」も同じく自信の無い男が言うこと。 それから、「ガリガリにやせてる子が好き」「おしりのちっちゃい子が好き」っていうのもそうです。 女性はもともと男性よりも体脂肪があるものだし、子供か少年かってくらいおしりのちっちゃな女の子は女性らしいとは言えないものだから。 上記のような発言をする男性には要注意。 仮に見た目がモデルみたいにかっこよくても、社会的にすばらしい地位にいたとしても、男として自信が無い、男度の低い男性だと思って間違いありません。

わたくし、男度が低く、自信が無い男性なんだそうです。orz

この説のソースを自暴自棄気味にネットで探しまくるも、どうしても見つからず。OL社長さん、この説のソースを教えてください・・・。そうでないと、僕は本当に自信を喪失しそうです。ただ、そのソースが見つかったら見つかったで、さらに自信を喪失するというオチですが・・・。orz


<追記 2/12 2am>

杉本氏@福岡大から本エントリーに関するとても面白いトラックバックを受けたので紹介。

F1 by sugimoto-labo

さすがは本職のマーケティング研究者。僕の議論にピシッとした背骨を入れてくれている。感謝感謝。

杉本氏が書いていることをベースに言えば、結局OL社長さんたちは、大括りのF1層をさらに突っ込んで調べてみることで、マーケティング的に有意な「サブ・セグメント」を見つけようとし、またそれをやろうとしているクライアントをサポートしようとしているのではないかと。また、その過程で、この年代層をさらに詳しく説明する新しい変数を見つけようとしている。そんな感じなのではないかと。

彼女たちはいま自分たちがF1層であるわけで、いろんなところで語られるF1層の特徴やイメージに少なからず違和感を感じているのではないかと思う。だからこそ、「自分たちのことは自分たちで語るわよっ!!」という動機がこの社内ベンチャーにはあるのだと推測する。それは僕もよく分かる。僕も上記した団塊ジュニア分析の仕事のなかで、「月刊アクロス」(すでに休刊。いまはWebアクロスがある)あたりでまことしやかで解説されていた団塊ジュニア像にどこか違和感を感じていた。

自分のことを自分の目で見て自分の言葉で語る。その自己言及のプロセスから生まれてくる「何か」には大いに期待したいと思う。

Posted by MK @ 11:26 AM
Category : Miscellaneous
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February 07, 2005
『イマドキの就職活動』

このBlog、年初から僕的にはかなりマメに更新してきたけど、2月に入りすでに息切れ状態。先週は極寒のなか学内業務に奔走し、マジで凍え死にそうになる。この時期は、寒がりには1年のなかでも一番キツイ時期です。

2月に入ってから、うちの3年生のゼミ生たちの就職活動が本格化してきたようだ。僕自身の就職活動の頃とは何もかもが違う。

エントリーシートなんてものは、10年前は当然ぜんぶ手書きでやった。年末年始に腱鞘炎になりそうになりつつ書いた記憶がかすかにある。それがいまや全てネット経由でOK。リクナビなんかの就職支援サービスも充実していて、昔と比べるケタ違いの量の情報を集めることができる。企業からの連絡も全て学生のケータイに直接入ってくるので、自宅に待機したりする必要もまったくない。いや~、ほんと情報社会ってすばらすぃ。

けど、そうした情報アクセスの利便性が格段に向上した現代において、就職活動における学生側の不安が軽減したかと言えば、そうでもないみたいだ。リクナビ等で得られる膨大な量の企業情報、書店に所狭しと並ぶ就職活動関連書籍、ネット上で大量に閲覧できる他の学生の就職活動日記、等々。そうした情報の海のなか、学生は昔以上に得体の知れない漠然とした不安感に悩まされている気がする。

当然ながら、情報の取捨選択には個人個人に「ものさし」が必要なわけだが、それがまだ出来上がっていない多くの大学3年生には、「就職」という人生で初めての経験を前に、そうした怒涛の情報量がより一層不安感を煽っているように見える。「今はいろんな情報が簡単に手に入るんだから、就職活動もやりやすくなったんじゃない?」というのは、一世代前の僕らの感覚でしかない。

そうなると、ある意味面白いことなのだが、学生の志望企業選びが結果的に昔以上に「ブランド志向」になってしまっている傾向が徐々に見えてきた。最近就職活動中のいろんな学生と話していて、「昔もこんなにブランド志向強かったかなぁ・・・」と思うことが多々あるのだ。

しかし、当然といえば当然で、まだまだビジネスの知識も経験もほとんどない学生が、膨大な量の企業リストのなかからいきなり入りたい会社を選べと言われれば、そりゃ自分の知っている有名な会社を選ぶに違いない。僕でもそうするだろう。アプローチできる企業数の母数が極端に大きくなったため、直感的に「ピン」とくるものを選ぶと結果的に少しでも自分の記憶に馴染みのある企業を選びたくなるものだ。

その結果生まれてくるのは、昔以上に短絡的な「ブランド志向」的企業選びである。リアルに企業に接する機会がまだまだ本当に少ない学生に対して、企業に関する経験の伴わない二次情報が大量に送られた結果、かえって学生は困惑してしまっている。リクナビを信じて良いのか、その企業のサイトを信じれば良いのか、他人の就職活動日記を信じれば良いのか、雑誌で得られる情報を信じたら良いのか・・・。二次的・三次的に薄められバイアスのかかった大量の情報が押し寄せるなか、就職活動という漆黒の闇を手探りで進む学生たちは、単に名前を知っているというだけで「ブランド企業」にほのかな温かみを感じて無意識に引き寄せられる。

これは、うちの大学の相対的ポジションも関係あるだろう。言い方は良くないかもしれないが、一般論として、ト○タ、ソ○ー、三○商事などの就職先人気ランキングで常時トップクラスに入る企業に就職する学生はそれほど多くない本学において(※それが悪いことではないが)、これらの企業の内定をゲットできた学生は声にはならないが無条件の賞賛を得ることができる。これが、そうした無条件な「ブランド志向」の雰囲気をさらに強めている。

率直に言わせてもらえれば、これでは「つまらないなぁ」と思う。世の中には僕も知らないようなユニークで将来性も十分にあるベンチャー企業がたくさんある。僕は仕事柄IT系のベンチー企業の方とよく会うのだが、いつも感じるのはまだまだベンチャーは人材難だなぁということ。もちろんトップ経営陣は極めて優秀で気概を感じる方ばかりなのだが、若手が育っていない/入っていないところが多い。いまデキる新卒社会人を欲しがっているのは、他でもないベンチャー企業なのだ。

言うまでもないが、有名ブランド企業に入ることにまっとうな理由と動機があるのであれば、僕はそれを否定するつもりはまったくない。今も昔も、大きな会社、有名な会社でしかできない仕事はいくらでもある。ただ、いまの学生(特にうちの)は、安易に「ブランド志向」になり過ぎている気がする。それが、ITの普及によって便利になった結果なのだとしたら、ますます寂しくなる。

今の時代、どの企業が10年後に名前が残っているのかなど誰にも分からない。10年前に「勝ち組」と思われていた企業がいくつ消えていっただろう。「今」の安定が「将来」の安定を約束する時代では到底ない。これはいま就職活動をしている学生たちもアタマでは分かっている。しかし、いざ初めての会社選びをするとなると、やはり怖いものは怖い。逆に、「こんな時代」だからこそ、刹那的な「安定」を求めてしまうとも言える。

内輪贔屓にはなってしまうが、本学の学生の多くはなかなか捨てたモンではない実力を持っていることを就任してからのこの2年で感じている。だからこそ、安易な「ブランド志向」で会社選びをせず、自分の将来のキャリアプランをしっかり考えて、本質的な会社選び、就職活動をしてもらいたいと心より思う。

最後に、参考までに楽天市場の新卒採用のサイトで見つけたFlashを紹介したい。ちょっとあざとい気もするが、いま僕が感じているような思いを結構うまく表現してくれている気がしたので。こんな風に会社選びをして欲しいなぁと。楽天が良いかどうかはまったく別問題ですが(笑)。

 ・楽天市場・企業紹介「チャレンジ中毒。

(追記 2/8 0pm)
アサヒ・コムにちょうどタイムリーな記事があったので紹介。ネット依存の就職活動の反動のひとつとして、企業との「対面」を求めて殺到する学生たち・・・だそうな。

 ・「合同会社説明会の規模拡大中 ネット定着でも「対面」重視
  (アサヒ・コム 2/8)

++++++++++

来週はスタンフォード大学に出張。初めてのパロアルトなんでかなりワクワクなんだが、帰ってきてからまたここで報告したいと思う。皆さま、お風邪などひかれませぬよう。

Posted by MK @ 02:26 PM
Category : Miscellaneous
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