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January 20, 2006
『IT新改革戦略 - 根強いハードウェア・ベース思考』
前回の新年のご挨拶からちょっと間が空いてしまった。その間に、世の中いろいろと動きがあった。 今はなんといっても、例の「ライブドア・ショック」の真っ只中である。東京地検特捜部がいつもにも増して気合が入っている印象を受ける。それだけ問題は根深いのかもしれないが、いま僕に出来ることは、風説風評に左右されずに、しっかりと動向を静観することかなと思っている。 それよりも、ネットとかITとかいう領域をメシの種にしている人間ならば、もう一つ別のニュースにも注目しておかなければならない。今日(時間的には昨日だが)、政府のIT戦略本部が「IT新改革戦略」を発表したのだ。 これは、過去5年間にわたり政府が実施してきた「e-Japan戦略」(2001年1月)、そして「e-Japan戦略Ⅱ」(2003年7月)に続く、今後5年のIT戦略構想を示したものである。 客観的に見て、過去5年のe-Japan戦略はかなりの部分で大きな成果をあげたと僕は思っている。2001年に「5年以内に世界最先端のIT国家になる」という大風呂敷を広げたわけだが、ブロードバンド環境の普及(特に低価格化)や、ケータイに関連する様々なビジネスの拡がりなど、日本のIT環境はこの5年で急速に進展したといえる。これは、構造改革とIT推進を密接に関連付けてIT政策を実施してきた小泉内閣の大きな成果のひとつ言えると思う。 ただ、e-Japan戦略で当初掲げていた施策のなかで、これまでのところ実現が遅れている領域がいくつかある。その最たるものが、行政と医療である。この2分野におけるITの導入と活用は、重点課題としてこれまでも取り上げられてきてはいたが、実際の現場での展開は極めて遅々としたペースでしか進んでいない。これら以外にも、当初描いていたITの活用がうまく進んでいない領域があるが、こうした過去5年の反省を踏まえて、これからの5年のITの戦略的活用のビジョンを提示したのが今回の「IT新改革戦略」である。 以下が今回提案された内容を1枚にまとめた図である。 まあ、いかにも政府がまとめた図という感じで、当たり障り無く無難にまとまっている(悪い意味ではなく)。 実は、この発表に先立って、昨年末から年初にかけて行なわれていたパブリックコメントの募集に対して、僕も軽くコメント(PDF)を送っておいた。こうしたパブリックコメントの募集は、実施主体(政府)としては、「パブリックコメントを募集した」という事実が重要で、投稿されたコメントをもとに内容が本質的に修正されるわけではない。あって細かな文言の修正ぐらいである。ただ、自分のアタマの整理するという動機が9割9分、一市民としての意見表明の動機が1分で、僕も僭越ながらコメントを送らせてもらった。 今回僕が送ったコメントの概要は、「本IT戦略案は、ハードウェアの視点からの議論に偏りすぎている。今後のIT戦略に考えるにあたり、戦略的なソフトウェアの研究開発と利活用の問題を検討する必要がある」というもの。このような指摘をしたのは、単に僕がいまソフトウェア戦略に関する研究を進めているから(笑)。というのは半分冗談だが、半分は大マジメである。 今回の「IT新改革戦略」にも書いてあるように、「e-Japan戦略」と「e-Japan戦略Ⅱ」の5年は、キャッチアップの戦略だったわけで、とにかく欧米並みのITインフラの整備が最優先だった。それは自ずとハードウェアとしてのITをいかに普及させ、幅広く活用してもらうようにするかという意図が前面に出てくる。上にも書いたように、それはそれで大きな成果をあげたことは疑いようのない事実である。 しかし、これからの5年を考えるにあたって、引き続きハードウエアとしてのITの開発と整備・普及が大切であることは変わらないが、今回はソフトウェアの問題ももっと掘り下げて扱うべきだろう。 ソフトウェアと言えば、WordとかExcelなどのアプリケーションソフトや、ドラクエやFFなどのゲームソフトが一般的には一番分かり易いが、少し考えてみれば、現代の僕らの生活のほぼすべての場面で何らかのソフトウェアにお世話になっていることにすぐ気付くはずだろう。家電製品、ケータイ、車、電車、etc. これらに内蔵されている組込みソフトウェアが不具合でちょっとでもおかしな動きをすれば、僕らはたちまちパニックに陥ってしまうだろう。それほど僕らの生活はソフトウェアに依存しているのだ。 そんななか、今回の「IT新改革戦略」の内容は、依然ハードウェアをベースにした提案が多い。繰り返すが、ハードウェア的なITインフラの整備は今後も継続的に進めていく必要がある。ただ、それに加えて、その先進的ハードウェアを活かし、また僕たち生活者のニーズに的確に応えるようなサービスを提供するためのソフトウェアの開発支援や導入推進についての議論があって然るべきだと思うのだが、文中ではほとんど触れられていない。 僕はそんなことをつらつら思いつつ、ひとまずコメントとしてまとめて送ったわけだが、まあ当然のように、今回発表になった最終版に反映されるわけもなし(笑)。一応今回届けられたすべてのパブリックコメントとそれに対するIT戦略本部の考え方と対応をまとめた一覧表(PDF)を見てみると、僕のコメントに対する考え方と対応は「ご指摘の内容については、今後の政策の推進に当たっての参考の1つとさせて頂きたい」とのこと・・・。ふーん。 しかし、今回発表になった最終版を読み直していて、上記のソフトウェアの問題に加えて、もう一つ盛り込んで欲しかったなぁと思った点がある。それは、「参加のアーキテクチャ」の視座である。 この「IT新改革戦略」における大きな理念のひとつとして、「利用者・生活者重視」というものがある。これは、主にこれまで供給者の視点から議論され、また導入・活用されてきたITを、それを実際に使う立場の視点で捉えなおし、より多くの生活者がITによる利便性の向上を実感できるようにするという意図がある。これは大いに賛成するところである。 しかし、そうした「利用者・生活者重視」という理念を実現するアプローチはどうかというと、これまでと何ら変わらないハードウェア重視のゼネコン的政策である。ハードとしてのITを問題領域にぶち込んだら解決するに違いないという安易な姿勢は、「道路や橋を作れば景気は回復する」という発想に通ずるものがある。これでは、生活者は「お上」の施しをただ待つだけの受身の姿勢のままである。 ここで思い出したいのが、IT、なかでもインターネットが僕たちに何をもたらしてくれたのかということだ。大げさに言うなれば、社会変革というものに対して、(特にここ2~3年の)インターネットの発展は「参加」することを可能にしてくれたのではなかったかということだ。 マクロレベルでの世の中の動きに対して、これまで僕らが持ちえる行動オプションは、「傍観」か「意図的無視」ぐらいしかなかったわけだが、インターネットの急速な発展と普及により、おぼろげながら「参加」というオプションを手に入れられるようになってきた。Googleをはじめとする検索エンジンやRSS技術の活用にによる広範な情報収集、ブログによる個人の情報発信、各種ネットサービスの活用による情報ハンドリングの圧倒的効率化などなど、インターネットによって情報の「収集」・「整理」・「発信」が強力にエンパワーされるようになった僕らは、一つの行動主体として、いろんな社会現象に「参加」できるようになった。そのひとつひとつの「参加」は極めて小さなものではあるが、その小さな「参加」の集合が、世の中全体に対して意味ある行動の束として、少しずつではあるが存在を認められつつあり、また少しずつではあるが世の中に影響を与えるようになってきている。 これがまさにオライリーが「Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル」で述べた「プラットフォームとしてのウェブ(The web as a platform)」という視点だ。ブログや広告サービスなどのネット上の様々な機能やサービスを組み合わせて活用しながら(Mushup)、生活者が主体的に社会の営みに参加できるアーキテクチャ(社会的仕組み)を提供し始めているのが、いま現在のインターネットである。いまネット上でさかんに議論されている「Web 2.0」という標語も、単なる新しいネット技術/サービスの一覧なのではなく、そうした次代のインターネットに対する期待感をざっくりと一纏めにしたものだと僕は理解している。 今まさに僕らの目の前で沸々と湧き上がってきているこうしたITやネットの可能性、そしてそれをもとにした生活者の社会参加の視座が、今回の「IT新改革戦略」のなかには明示的には盛り込まれていないのは残念に思う。文中ではいろいろ具体的な政策が提案されてはいるのだが、上記したようにそれらの多くはハードウェア・ベースの解決でしかなく、生活者自身がその取り組みに自発的に参加することを誘発するような仕組みの提案はほとんど見えてこない。そうしたことから、今回の提案の理念や具体的施策の部分に、今後のIT社会がもっと具体的なかたちで僕らに提供するであろう「参加のアーキテクチャ」の視座を少しでも盛り込んでもらえたらなぁと、いま改めて読み直して感じている。 最後に整理すれば、今回発表になった「IT新改革戦略」を読んで、基本的な提案の方向性には賛同するものの、依然として強くハードウェアに依存した視点からの問題設定、そしてハードウェアをベースにした問題解決のアプローチに少なくない不安を感じた。そこで、僕はひとまず上記したように、(1)ソフトウェアの問題の重要性と、(2)「参加のアーキテクチャ」の視座の盛り込み、の2つを問題提起(というほどでもないけど)させてもらったわけだが、皆さんはいかがだろうか? 当たり前だが、もっと違う視点からの切り込み方もあるだろう。正直僕は医療分野の問題には詳しくないので、今回いろいろと提案されている医療分野の施策(レセプトの完全オンライン化など)について、正確に議論する力を持ち合わせていないが、もっと掘り下げて議論する必要はあるだろう。また、上で述べたソフトウェアの問題に関連して、ハードとソフトを融合させた各種ITサービスの開発と普及についても、もっともっと議論が必要だろう。例えば、日本にGoogleに匹敵する企業を今後5年内に育て上げるには、どんな環境整備と仕掛けが必要なのか、こんなことも考えてみても面白い。 今回発表になった「IT新改革戦略」は、いろいろ不備や問題もあるだろうが、それでも今後5年の日本のIT戦略を考える上で、幾度と無く振り返られる一つのメルクマール的資料になるだろう。ぜひ皆さんも一度軽く目を通して、ブログ等でこの国家IT戦略の議論に「参加」してみるのはいかがだろうか。 Posted by MK @ 01:05 AMCategory : E-biz news Permalink | Comments (0) January 01, 2006
『あけましておめでとうございます。』
今年は元旦からのブログエントリーです。 昨年も本当にいろんな方々にお世話になりました。忙しさにかまけて、まともにご挨拶できていない方がいたり、半ば放置プレー状態にしてしまった案件も少なくないです。誠に申し訳ないです・・・。そんな中でも、いろんな方々に支えてもらったなぁとつくづく感じます。本当にありがとうございました。 今年は柿原、「攻めの年」にしたいと思っております。いまの職場で3年が経とうとし、いろんな面で一度キチッと成果を出しておかねばならないフェーズにきていると思います。仕事も4年目に入ると、いろんな面で慣れからくる甘えが出てくるかと思います。そうならないためにも、現状に安住せず、攻めの姿勢で様々なことに取り組んでいきたいと思います。 なかでも、研究については今年は気合い入れて行かねばと思っています。満を持して昨年スタートさせたソフトウェア戦略に関する研究を軌道に乗せるべく、今年は本格的にフィールドワークを行う予定です。また、昨年より遅れに遅れている翻訳案件を進めて、秋には出版に漕ぎつけたいと思っています。 僕の力量不足・経験不足から、今年もまたまた各方面にご支援・ご協力をお願いすることも多々あるかと思いますが、何卒よろしくお願い致します。 いつもお世話になりまくっている諸先生方、いつも僕に新しいインスピレーションを与えてくれるビジネス界の方々、年々オヤジ化してくる僕の脳味噌とマインドに刺激を与えてくれる学生の皆さん、今年の「攻め」の柿原、ご期待くださいませ。 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 2006年 元旦 柿原正郎 Posted by MK @ 09:54 PMCategory : Notice Permalink | Comments (0) |
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