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February 03, 2008
『Microsoft + Yahoo! 雑感』
しばらくぶりに別のテーマでエントリーを書こうと思っていた矢先のBreaking news。MicrosoftがYahoo! Inc.に対して買収提案を行ったとのこと。まぁ、やっぱり少しはこのことにも触れておかないといけないと思い、自分のメモのためにも雑感を述べておこうと思う。 スケール、タイミング、スキーム、様々な面から見ても、今回のMSが「本気」なのは明らか。MicrosoftがYahoo!に興味を持っており買収も検討しているというのは一昨年から言われていたことだが、これまではその動きがはっきりと表沙汰になることはなかったし、あくまでも噂の域を出ていなかった。 しかし、今回はMicrosoft自らYahoo!に送った買収の提案状を公開し、週末の朝だというのにすぐさまプレス発表まで行った。さらにこの日、CEOのSteve BallmerはMicrosoftの全社員に対して、この買収提案の成功に強い自信を持っていることをはっきりと示すメールを送っている。 今回のMicrosoftのYahoo!に対する公開買収提案は、Yahoo!が1/29に減益の四半期決算と1000人規模のレイオフを発表した直後のタイミングでここまで素早く且つ大胆に動いたということで、いかに綿密に練られた計画と周到な準備に基づいているかということを如実に表している。 日米双方のネット上のこれまでの議論では、「買収成立の可能性高し」といった意見が大多数のようだ。その根拠としては、ファイナンス面と事業シナジー面の2つがある。 まず、ファイナンス面からの買収賛成/容認根拠は、「あそこまで高いプレミアム(1/31のYahoo!の株価の1.62倍の価格=1株31ドルでの買収提案)を見せられたらYahoo!も無視できないし、Yahoo!の株主利益を考えれば、Microsoftの提案を飲まざるを得ないだろう」といういたって現実的なものである。 また、事業シナジー(相乗効果)の面からも、かなり大きなメリットが期待できるというのも買収賛成/容認論の根拠のひとつとなっている。もちろん既存サービスの重複も多いのだが、それでもYahoo!とMSNの顧客ベースが一緒になるスケールメリットと、インフラ共有によるコストメリットは極めて大きいだろう。 懸念材料としては、やはり明らかな企業文化の違いが挙げられている(参考(1)(2))。シリコンバレーのIT企業の代名詞のひとつであるYahoo!の人々にとって、この買収提案を飲むということは「Microsoft帝国の軍門に下る」というような意味さえ持つのは想像に難くない。 このMicrosoftのYahoo!に対する買収提案は、これから1〜2ヶ月のうちに急速に進展するだろうから、いま現時点で予測や評価をしても仕方がないが、僕としてはこの一件を比較的ポジティブに捉えている。 僕はGoogleという企業をこれ以上とないほど高く評価しているが、やはり一強体制はいろんな意味でよろしくないとも思うので、その対抗馬としてMicrosoft+Yahoo!がしっかりと機能するのであれば、一ユーザーとしては良いことだと思っている。 日本のヤフー(Yahoo! JAPAN)は、米Yahoo!ではなくソフトバンクが筆頭株主なので、今回のアメリカでの買収問題がすぐさま大きな影響を与えるわけではないのだが、もし本国でMicrosoft+Yahoo!が実現すれば、遅かれ早かれ日本国内のマイクロソフトとヤフーの協働も必然的に検討され実施されていくことになるのだろう。 Microsoft+Yahoo!の具体的な施策としては、やはり、 ・Microsoftのウェブブラウザー(IE)の初期画面がYahoo!になる などがすぐに頭に思い浮かぶし、それらの事業的可能性は極めて大きいと思う(MSNとYahoo!ブランドの混在した合体だけは勘弁してもらいたい!!)。さらにソフトウェア開発、サービス開発レベルで、もっとつっこんだ協働もいろいろと可能だろう。特に、エンジニアや研究者の間での情報交換や知識共有が、また新たなイノベーションを生むことも考えられる。 だが、Yahoo!が今回のMicrosoftからの提案を却下し、独立独歩路線を維持するという選択肢もまだわずかながら残っているとは思う。 せっかちな株主や投資家からのプレッシャーもかなり高まってくると思われるので、いまのままの独立路線は容認できないという意見も多い。しかし、昨年Yahoo!が発表した数々の動き、特に大型買収案件(自動ネット広告取引所のRight Media、オンライン広告ネットワークのBlueLithium、コラボレーションソフトのZimbra)は、苦しみながらも次の成長へと足を進め始めたYahoo!の力強さのようなものを感じさせてくれていた。また、次期Yahoo! Musicには、相当画期的な音楽サービスが用意されているとの噂もあり、僕としてはかなり期待していた。 せめてあと1年、Yahoo!のCEOのJerry Yangに時間を与えてあげられたら、もしかしたらYahoo!は単独でもしっかりと復活できるかもしれない。そう思える部分も多々あるのだが、そんな淡い思いを吹き飛ばすかのような今回のMicrosoftの買収提案である。5兆円近い手持ち資金を持って大胆且つ冷徹な力技で押し切ろうとする企業が他にどこにあろうか。その手法に疑問を感じるちょっと前まで中の人だった大物もいるのがさらに興味深い。 やっぱりこんなダイナミックな企業戦略や産業変化を生々しく見せてくれるIT/ネットの世界って、ほんとにおもしろい。とにかく、いまはこのドキドキ・ワクワク感を噛み締めながら、動向を静観していこうと思う。
・「MS敵対買収に発展か ヤフー側には毒薬条項あり」
・「ラウンドアップ:マイクロソフト、米ヤフーに買収提案--その時グーグルは?」
・「CNET Japan: MSのYahoo買収は実現するか、Googleへの勝算は?」 Permalink | Comments (0) October 12, 2007
『川の流れは何処へ:Radiohead, NIN, Oasis, Jamiroquai, Madonna, and More?』
堰を切ったように、というのはまさにこのことだろう。10月に入ってから、音楽業界において極めて重大なニュースが立て続けに飛び込んできた。
音楽業界に「激震が走った」と表現しても何の誇張もないだろう。 これまで、音楽業界というものは、レコード会社とアーティストが持ちつ持たれつの蜜月の関係で築き上げられてきた。アーティストがメジャーになるためにはメジャーなレコード会社と契約することが必須だったし、レコード会社としてもビッグアーティストを擁することには多大の努力と投資を行ってきた。 しかし、いまインターネット技術の普及とともに、音楽の「中身(コンテンツ)」は、レコード会社が用意した「智恵(ノウハウ)」や「道(チャネル)」が無くとも「お客(ユーザー)」に届かせることができるようになった。MySpaceやYoutubeを積極的に活用したインディーズバンドが突如としてビッグヒットを飛ばすことも、今ではそれほど珍しいことではなくなってきた。 こうした商品の「制作」→「流通」→「販売」のバリューチェーンのなかで、真ん中の「流通」フェーズがインターネットの普及により大きく変化し、その役割の価値が相対的に低下・もしくは喪失するという「ディスインターミディエーション(Disintermediation)」の事例は、僕らは様々な領域でこれまでに何度も見てきている。金融、旅行、パソコン、等々。 音楽業界では、このインターネットのインパクトは、まずは「川下」の領域から始まった。すなわち、販売チャネルのネット上での拡大であり、その代表格が言わずもがなAppleのiTunes Storeである。iTunes Store(スタート当時はiTunes Music Store)は、1曲99セントという革新的な価格設定と、その分かりやすさや使いやすさで、一気に普及した。その後も、様々な音楽配信・販売ビジネスが立ち上がり、ユーザーが音楽を購入する手は格段に増えた。 しかし、そんな音楽ビジネスの「川下」の革新的変化のなかでも、アーティストとレコード会社の関係は十分安定的なものだった。Appleも、iTunes Storeに幅広い楽曲を提供してもらうために、大手レコード会社と良好な関係を構築することは必須だったし、楽曲の制作やプロモーションや著作権管理において、アーティストはレコード会社のサポートは失うわけにいかなかった。少なくともこれまでは。 そしていま、冒頭の動きである。音楽というもの(コンテンツ)を最初に生み出す存在=アーティスト自身が動き始めたのである。これはまさに「川上」の変化だ。いや、もっと言うならば、「川の源流」がこれまでとはまったく違う方向に流れ始めたのである。 これまで「川の源流」が流れていくことで潤ってきた山や野原は、今後その姿を大きく変えていくに違いない。フリーエージェント宣言をしたNine Inch NailsのTrent Reznorは自分のサイトで次のように高らかに述べた。 「従来の音楽ビジネスの流通モデルはすでに限界が見えている。音楽ビジネスは今までの状態と本質的に異なる別物へと革命的な変化を遂げている。ついにわれわれの聴衆と直接的かつ適切な関係を結べるようになったことを私はたいへん嬉しく思う」 このアーティスト達の既存音楽ビジネスへの危機感は、これまでも様々な場所で垣間みられてきた。最近の新たな「川下」での積極的な動き(iTunes StoreやAmazon.comでのDRMフリーの音楽コンテンツ販売など)が、皮肉なようだがアーティスト達の危機感をさらに募らせた部分もあるのではないか。 ビッグアーティスト達がレコード会社に頼らない独自のやり方で今後活動していくという今回の立て続けのニュースは、音楽業界の本格的な構造変化における重要なメルクマールになったような気がする。 この流れはもう止められないかもしれない。堰は完全に切られたのか。Radiohead, NIN, Oasis, Jamiroquai, Madonna。次は誰だ? Posted by MK @ 12:15 AMPermalink | Comments (8) September 24, 2007
『スタンダードかギミックか:iPod touch』
とうとう我が家にもやってきました。Appleの最新型iPod「iPod touch」。 これまで僕が使ってきたのはiPod nanoだが、けちってメモリ容量の少ない2GBモデルにしてしまったため、メモリがいっぱいになってしまっていたので、ちょうど買い替え時期だった。また、以前にiPhoneに関するエントリーを書いた手前、やっぱり例の「マルチタッチインターフェイス」を自ら試したいというのもあった。 というわけで、早速驚いたのが家に届いた小包の小ささ。何せ、タバコケース2つ分くらいで、びっくりするほど小さいので本当に本体が入っているのか心配になってしまうくらい。というのも、ケータイやPCを買うといつも付いてくるあの忌々しい分厚いマニュアルが入っていないのだ。入っているのは、イヤフォンとUSBケーブルとペラペラの説明書のみ。らくらくホンもビックリである。 まさにこれがiPodの強みであり、Appleの競争優位である。これだけの先進技術の固まりの製品が、マニュアル無しでほとんどの機能を直感的に使うことができる。しかも、高齢者をターゲットにした製品ではなく、一般ユーザー向けの製品でそれを実現しているのである。尚且つ、今回はマルチタッチインターフェイスというAppleとしてもまったく新しいユーザーインターフェイスを採用した製品であるにもかかわらず、である。 そしてその注目のマルチタッチインターフェイス。まさにルック&フィールで何の迷いもなく使えてしまう。画面をスライド(ページ送り)をする際に、指で画面を滑らせて放り投げるような動作をすると、ものスゴい滑らかな動きで画面が滑っていく。初めて使った際には、「おおっ」と声を上げてしまいたくなるくらい。これまでにもタッチスクリーンのインターフェイスを採用した製品はいくつもあったのだが、それらが全て色褪せてしまうくらい違う次元に行ってしまっている。 こうした野心的なインターフェイスを自らの主力商品であるiPodにど真ん中ストレートで投入してきたAppleの決断には感嘆するばかりである。 僕はデザインは専門でもなんでもないのだが、製品開発におけるデザインに関して感覚的に思うのは、日本のメーカーは「足す(加える)デザイン」はそこそこ上手なのだが、「引く(削る)デザイン」はあまり巧くないということだ。何かしらの原型があれば、それに必要なものを付け足していくような作業には創造性を発揮するのだが、かなりの水準でユーザーのニーズが満たされたり絞られてしまっている状況において「何を引く/削るのか」という判断ができないということだろう。それは、多様な要素間の優先順位を付けるのがヘタということか、優先順位の低い要素を削るという大胆な意思決定をするのがヘタということか、その両方ということだ。 この点に関して、某家電メーカーの中の人が国内家電メーカーのユーザーインターフェイス設計の問題を指摘してくれている。設計の方向性としては、「操作回数を減らすのか」、もしくは「ボタンの数を減らすのか」という二極に分かれるが、ここで前者に向かったのが国内メーカー、後者に向かったのがAppleということになるのだろう。事実、Steve Jobsは「ボタンは製品を複雑にし、外観を損なう」と考えているようで、それがAppleの製品設計の根底にずっと流れ続けている。 このように、iPod touchのユーザーインターフェイスの革新性やAppleの製品設計思想の素晴らしさは、敢えて僕がここで繰り返さなくても五万といるAppleの熱狂的ファンの人々が十分答えてくれているが、僕の関心はこの前のエントリーでも書いたように、やはりこのユーザーインターフェイスの「市場性」にある。 確かに、この「マルチタッチインターフェイス」の革新性は疑問の余地はない。一度見てしまえば、他のメーカーでも真似はいくらでもできるだろう。しかし、最初に設計・開発し、実際に市場に投入するのはApple以外には無理だったと思わざるを得ない。 しかし、この革新的ユーザーインターフェイスが、QWERTYキーボードのような「スタンダード」になるかというと、その可能性は低いのではないだろうか。他のメーカーとしても、この「マルチタッチインターフェイス」をそっくりそのまま模倣してしまうことは、自らデザインの放棄を公言してしまうことにもなるので、タッチスクリーンは採用しても微妙にルック&フィールを変えてくるだろう。 さらには、Apple自身ですら、この「マルチタッチインターフェイス」を今後のiPodの主力インターフェイスとして採用していない。このiPod touchと一緒に、これまでのiPodのインフーフェイスを踏襲する「iPod Classic」と「iPod nano」もリリースした。Apple内でも、iPodシリーズ全体から完全に物理ボタンを消し去ってしまうほどの決意をもってiPod touchを投入したわけではないのである(まあ、それは賢明な判断だと思うが)。 となると、僕が手に入れたこのiPod touch。単なるギミック(おもちゃ仕掛け)のユーザーインターフェイスが付いた容量の少ない(16GB)iPodなのだろうか。やっぱりこれは「電話機能無しiPhone」でしかないのだろうか。僕はそんな製品を嬉しそうに発表日当日に予約注文した超ミーハーなガジェット好きユーザーなのだろうか。 うん。まあ、そういうことなのだろう。まあ、それで良いではないか。そうであったとしても、Appleの今後の動きにはやっぱり大注目であることには変わりはない。しばらく僕はおもちゃを与えられた子供状態だろうが、そのおもちゃ遊びから家電製品の未来を妄想してみたっていいだろうさ。 Permalink | Comments (4) September 08, 2007
『おっさんがWebを走り抜ける!?:1-click Award 2007』
今年もやってきました。リクルートMC主催のWebコミュニケーション企画コンテスト「1-click Award」。 今年はプロモーション用のブログパーツがなんともニクい。このおっさんに「カンチョー」をしてあげると、おっさんは慌てふためきながらこのブログバーツが貼ってあるいろんなサイトを走り抜けていく。こんな小ネタにも、Webの世界の可能性や奥の深さを感じさせてくれるところがほんとニクい。 このイベントはプロ/アマ関係なくエントリーできるし、また今年は企画一本勝負の「プランニング部門」もあるので、ぜひうちの学生の皆さんも腕試しにチャレンジしてみてはいかがだろうか。 Posted by MK @ 01:09 AMPermalink | Comments (0) August 26, 2007
『音楽の境界の融解と変わらない自分:元気ロケッツ』
僕の今年の夏は音楽漬けの毎日だ。こんなに音楽にどっぷりはまるのは何年ぶりだろう。中学から大学まではまさに「No music, no life!」って感じだったのだが、働き始めてから音楽に触れる時間は一気に減っていまに至っていた。そんなわけで、ヘタすりゃ10年ぶりぐらいのMy音楽ブームである。 そんな勢いもあって、前のエントリーではPerfumeを紹介してみたわけだが、もうひとついま僕のスーパーヘビーローテーションとなっているものを紹介したい。単に気に入っているだけでなく、大げさに言えば「音楽」というもの境界を深く考えさせられる事例となっている。 それは「元気ロケッツ」というユニットである。 "Heavenly Star" by Genki Rockets
この曲は、2006年11月に欧米で先行リリース(国内は2007年2月)されたPSP用ゲームソフト「ルミネスII」に収録されたゲーム音楽である。そのゲームのリリース前である2006年9月11日にPVがYoutubeやMyspaceで配信されるやいなやいきなり大きな話題となり、その後様々なRemixバージョンも出され、iTunesのダンスカテゴリーではいまでも上位にランクインしている(2007月8月現在)。ちなみに、歌っている女の子は「宇宙で生まれ育ち、30年後に17才になるLUMI」という子だそうだ。宇宙ものSF好きのオッサンとしてはたまらない設定である。 圧巻なのは、先日2007年7月7月に世界同時開催された地球温暖化防止キャンペーンライブ「Live Earth」の幕張会場で、3Dホログラムでオープニングアクトを務めた映像である。こちらもネットで公開されているのですべて見ることができる。うーん、まさにレイア姫(若い人たちは分かるかなぁ)。 ・Live Earth_20070707_Genki Rockets_Live_originalA 音楽のPVやライブ映像は通常は著作権の関係でYoutubeなどでネット配信することには大きな障害がある。しかし、この元気ロケッツのPVやライブ映像はそもそもネットで配信されるの前提にしている。これは著作権はどのように処理しているのだろうか? Creative Commonsだろうか。(詳しい人教えてください) ネット配信を活用して口コミでプロモーションを仕掛けるアプローチは、これまでもさまざまなアーティストやレーベルによってされてきた。しかし、この元気ロケッツの場合は、さまざまな点が異なる。 まず、もともとの出自が音楽業界でなく、ゲーム業界であること(元気ロケッツのプロデューサーは著名ゲームクリエーターの水口哲也氏)。さらには、アーティストや曲自体のプロモーションが当初の主目的ではなく、PVの評判がネットで広がって結果としてアーティストや曲が立ってきたという経緯。また、それがLive Earthのような他の大きなイベントと絡んで、さらに大きな話題となっていること。ちなみに、Live Earthとの連動は元気ロケッツの当初の企画のなかには含まれていなかったと思うが、もしこれが計画通りなのだとしたら、本当にビックリ且つ拍手喝采の嵐である。 というわけで、この元気ロケッツの事例は、これまでの音楽ビジネスの枠をあまりに大きく飛び出してしまっている。しかし、結果としては、しっかりと音楽ビジネスになっている。これは音楽ビジネス、特にネットとの絡みでそれを考える際に、大きな示唆をもたらす。 いま音楽ビジネスで起こっている地殻変動は、端的に言えば「メディアの変化」×「チャネルの変化」ということにつきる。 「メディアの変化」とは、音楽というコンテンツがのっかる器(媒体)が大きく広がって行っていることである。レコードに始まり、テープ、CD、DAT、DVD、など物理メディアも大きく変化してきたが、音楽や映像のネット配信、ケータイの着メロ/着うた(フル)など、デジタルメディアとしても急速に拡大し続けている。 これに重なるように「チャネルの変化」が同時並行で進んでいる。チャネルとは音楽コンテンツを売る(ユーザーが買う)場の変化のことである。レコード/CD店だけでなく、レンタルショップ、ネット、ケータイなど、様々な場所で僕らは音楽に触れ、それを購入することができる。 この「メディアとチャネルの同時変化」が既存の音楽業界を大きく揺さぶらないはずはない。 同様の歴史を経てきた業界に、ビール業界がある。30年ほど前はビールは「酒屋さんから届けられる瓶ビール」で楽しむものだった。まさにサザエさんの世界である。しかし、80年代後半から急速にビールの「メディア」と「チャネル」が変化した。言わずもがな、「瓶→缶」というメディア(器)の変化と、「酒屋→量販店」というチャネル(売り場)の変化である。それまで市場シェアの6割超を押さえていた圧倒的リーダーのキリンは、その地殻変動の対応が遅れ急速にシェアを落とし、シェアトップの座をアサヒに明け渡したのである。このビール業界の事例を見ても、「メディアとチャネルの同時変化」がもたらすインパクトの大きさが容易に想像できるだろう。 音楽というかたちのないものを、著作権で保護しつつレコードやCDという物理メディアに載せることでモノ経済の中で商品として取引・流通させることで、アーティスト、音楽レーベル、ユーザーの相互満足を作り出してきた音楽業界。こうしたビジネスの仕組みを「時代遅れ」というつもりはさらさらない。生み出されるビジネスのボリュームを考えれば、少なくとも今後10年くらいはこの仕組みが有効且つ必要なものであることは明白だ。 しかし、「その先」、また「その先の先」を考えれば、事態は急速に不透明になる。メディアとチャネルの同時並行的な変化のなかで、音楽の(広い意味での)消費形態が大きく変わろうとしているなか、現在の音楽業界の構造やビジネスの仕組みは否応なく変わらざるを得ない。それは、いま僕たちが念頭においている「音楽」というものの境界そのものが変わってしまうかもしれないのである。 もともと音楽業界はテレビや映画などの映像系の業界との結びつきは強いが、今ではそこにゲームやネットサービスという業界も大きく絡みながら音楽業界に食い込んできている。映像・音楽・ゲーム・テキストをすべて含む国内コンテンツ産業の市場規模は2006年で14兆円である(デジタルコンテンツ協会調べ[PDF])。これら4つのコンテンツ領域がいま密接に絡みながらそれぞれ蠢いている状況だ。 今回の元気ロケッツの事例は、そのことを少なからず垣間見せてくれている。もともとのゲーム内音楽の企画ユニットという範疇を大きく飛び越えて、いまでは単体の音楽ビジネスとしても完全に成立している。さらにその成功にはYoutubeやMyspaceなどのネットサービスが密接に絡んでいる。ネット音楽配信サービスやSNSがかなり世の中に普及したこの現在だからこそ、元気ロケッツのブレイクが発生し得たわけである。こうなると、どこからどこまでが音楽ビジネスなのか、本当に分からなくなってくる。 ただ、こうした音楽の境界領域が他の様々な領域と浸食し合っている産業構造の巨大な変化のなかで、何か変わらないこともあるはずだ。それは、ユーザーの音楽を楽しむ姿勢や心ではないだろうかとふと思った。 僕はいまiPodで音楽を聴いたりYoutubeでPVを見たりしているわけだが、現在のこの僕の音楽とのふれあい方は、10年以上前にレコードやテープで音楽を聴いていた頃と比べて、何か変わったかと言えば変わっていないのではないかと思ったりするわけだ。スピーカーやイヤフォンから流れてくる音楽によって元気づけられたり癒されたりしている自分は、今も昔もまったく同じではないか。 そう思うと、この大きな産業変化も、一生活者にしてみれば、さして大きな変化でもないのかもしれない。音楽のメディアやチャネルが変わり、業界やビジネスの境界がいかに変わろうとも、音楽を聴いている自分は20年前も10年前も今も何も変わらないのだから。そう考えると、何とも言えず軽やかな気持ちになるのは僕だけだろうか。 そんな思いを馳せながら、宇宙から届けられた(笑)この曲に心癒される夏の週末の午後です。前回のPerfumeに引き続き、この元気ロケッツも個人的に超プッシュさせて頂きます。ぜひ聴いてみてください!!
Permalink | Comments (2) July 05, 2007
『外海へ出る国産ネットサービス:Fastladder』
日本のネットサービスビジネスにおいて、小さそうに見えるが実はとても大きな一歩だと思うニュース。約14万人のユーザーを持つ国内最大級のRSSリーダー(フィードリーダー)である「livedoor Reader」を英語化し、グローバル展開を目指すサービス「Fastladder」が7/3に発表になった。 「livedoor Reader」は後発ながらサービスインから8ヶ月で10万人のユーザーを集めたWeb型RSSリーダーで、Ajaxをフル活用した小気味良いユーザビリティが高い評価を得ていた。僕はRSSリーダーは使い始めからずっと「はてなRSSリーダー」を利用しているのだけど、「livedoor Reader」の高い評価を横目に見ながら、乗り換えようかどうしようかとずっと考えていた。だけれど、単に移行が面倒くさくてそのまま「はてなRSSリーダー」を使い続けてきた。 そして今回、「Fastladder」が発表され、いろいろ刺激を受けたので、思い切って使ってみることにした。 しかし、思い切る必要などまったく無く、あっけなく移行は済んでしまった。知らなかったのだけど、今はOPML (Outline Processor Markup Language)という規格があって、RSSリーダーの登録先を簡単に別サービスに移せるのだった。とうわけで、「はてなRSSリーダー」から「Fastladder」への移行は、1分もかからず(誇張無し)終わってしまった。 そしてさっそく「Fastladder」を使ってみたのだが、動きが速いのなんのっ!! 軽快な操作性で、大量の記事もサクサクとどんどん読み進められる。ビギナーからギークまで高い評価を幅広く得ているのも納得である。 僕がフィードを受け取っているサイトは30程度なのだが、それでも毎日数百の記事が入ってくる。いままで「はてなRSSリーダー」で見ていたのだが、全部処理をするのに結構時間がかかっていた。ということに、「Fastladder」を使ってみて初めて気がついた次第である。 「livedoor Reader」そしてこの「Fastladder」の開発の中心人物であるma.la氏がプレス発表の際に「できの悪い物を使っているとその程度のライフスタイル・使い方に縛られてしまう」と言っている。まさにその通りだろう。いや、「はてなRSSリーダー」のできが悪いと言いたいのではない。そんなことではなく、この「Fastladder(livedoor Reader)」のユーザービリティが良過ぎるのだ。「livedoor Reader」に関しては前から知っていたのに億劫がってそのまま放置してきたおかげで、随分と時間を浪費してきたに違いない。 この情報氾濫社会のなかで、情報処理の効率性は、アウトプットの生産性(量・質ともに)に大きな影響を与える。ウェブで毎日大量の情報(特にニュース情報)を得て恒常的に処理する必要がある人にとって、RSSリーダーはまさに画期的なソフトウェアだと思う。しかし、その普及は、ウェブ利用者の14%という調査もあり、まだまだといった状態である。 なので、RSSリーダーを使っているだけでも、ウェブ利用者としてはかなりデキる部類なのだろうが、そのRSSリーダーのなかでも、ものによってこれ程までに操作性・処理効率に差が出てくるわけである。つまり、情報処理の効率性に無頓着な人と意識的な人との間には、とてつもない差が生まれている可能性がある。僕自身、今回「Fastladder」を使ってみて、そんなことに愕然としたわけである。 さらに、この「Fastladder」の注目すべき点は、言うまでもなく国産のネットサービスが英語化されて、世界市場を狙うということである。 日本のIT産業、そしてネット業界はますます「ガラパゴス諸島化」してきていると言われている(参考記事(1)(2)(3))。この現象は、アメリカに次ぐGDP規模の巨大経済が、日本語という特殊な言語によって囲われて存在することで、この内側で相当な規模のビジネスが成立してしまうことに起因すると思われる。 この「国内だけでビジネスとして成立してしまう」という状況は、商品・サービスを開発する企業の立場に立ってみると、わざわざ苦労して英語ベースでの商品・サービス開発をするインセンティブが極めて低いという状況を生み出す。そして、この「ガラパゴス諸島化」現象はますます進んでいく・・・。 この状況は、中長期的には日本のIT/ネット業界のイノベーションを停滞させてしまいかねない。特に、ネットサービスの領域は、ユーザーからの評価を開発にフィードバックさせるサイクルを高速化し、サービスの質を急速に向上・進化させていく手法がよく採られるわけだが、この評価サイクルを回すユーザーのボリュームが、結局はその開発効率やイノベーションの度合いを大きく左右する。そうなると、英語圏の膨大なユーザー層相手に試行錯誤を続けたネットサービスと、日本国内だけで試行錯誤してきたネットサービスでは、そのイノベーションの速度に大きな違いが生まれるのは火を見るよりも明らかだ。 そうした懸念はネットサービス開発に携わる人であれば誰しも持っていると思うが、結局は作業労力の問題から、英語版の開発はどんどん後回しにされてしまい、別の新しい日本語サービスの開発に人もお金も回されることになる。 そんななか、今回の「Fastladder」は、国内でも極めて高い評価を得ているRSSリーダーを素早く英語化し、世界市場に向けてその真価を問う挑戦をした。そのことの意義はいくら高く評価してもし過ぎるということはないと思っている。 上の記事のなかで紹介されている開発者ma.la氏のさまざまなコメントは、非常に挑戦的であると同時に、極めて含蓄深いものがある。ぜひ読んでもらいたい。 言葉の壁。確かに低くはない。けど、死に気にならなくては超えられないほど高いものでもない。その壁を超えた先、いつもの慣れ親しんだ内海の外には、無限の可能性を秘めている大海原が待っている。 たしかに、その外海には内海にはない試練もたくさん待ち構えているだろう。けど、乗り越えられなければ、また内海に戻ってくれば良いではないか。人も、ネットサービスも、そんな気がしてならないわけである。なんかそんなことまで考えされた「Fastladder」の登場であった。 まあ、そんなこと抜きにしても、このRSSリーダー。本当に使いやすい。他のRSSリーダーをお使いの人は、ぜひ一度この「Fastladder」を使ってみてはいかがだろうか(Livedoorの回し者ではないけど)。もし使いにくいようであれば、また元のサービスに戻れば良いのだから。そんな試行錯誤をしなかった自戒も込めて。 Posted by MK @ 01:48 PMPermalink | Comments (5) February 12, 2007
『本格化するクロスメディア・プロモーション:宇多田ヒカル"Flavor Of Life"』
あのヒッキーがまたやってくれた。そんな気持ちでいっぱいだ。って、前回と同じ出だしで申し訳ない。けど、ほんとにそんな思いである。
2/28に発売予定の宇多田ヒカルの新曲「Flavor Of Life」のPVが、期間限定(2/9/〜3/8)ではあるがフルで無料配信され、またそのブログパーツが公開された(この上のものがそれを埋め込んだもの)。このプログパーツを使えば、著作権侵害などややこしいことを全く気にせずに、堂々とPVの映像をブログにはめることができる。 例の人気テレビドラマの挿入歌として耳にしてから、僕の脳内ヘビーローテーションだったので、個人的に非常に嬉しいのだが、それ以上に、これはネット映像配信を使った本格的なクロスメディア・プロモーションの事例として後に幾度となく取り上げられることになるのではないかと思う。 宇多田ヒカルがネットをプロモーションに活用するのは今回が初めてではない。彼女は、2003年1月19日、彼女の20歳の誕生日を祝ってスタジオから彼女が出演する映像をライブストリーミングで流すという大規模なネットイベントを実施したことでも有名である。 当時はまだブロードバンドがそれほど普及していなかった頃だったが、Youtubeのおかけで今でこそ「当たり前」になったネットで映像を見るということをこの時期にライブストリーミング配信で実現し、実際にこの1日だけで100万を超えるアクセスをはじき出したという点で、初期のネットプロモーションの成功事例として広く認知されている。 そして今回、この「Flavor Of Life」という新曲のプロモーションにもネットが本格的に活用されている。しかもその仕掛けにはちょっと工夫がされている。 まず、1月5日のドラマ初回放映の劇中でこの曲が初めて一般に公開された。それと同時に「着うた」としてケータイで配信が開始され、1ヶ月で既に100万ダウンロードを稼ぎ出したそうだ。そして、今回のネットでの(正式且つ合法的な)フルPV視聴+プログバーツの公開だ。 テレビでOA → ケータイで「着うた」配信 テレビで火をつけて、ケータイで煽り、ネットでダメ押しして、満を持してCD発売。恐らくその後はライブ活動へと繋がり、そしてDVD発売。一つ一つはまったく目新しくないが、それらが全体のプロモーション・パッケージとして体系化されている。これは僕の元同僚の井上哲浩氏が提唱している「オーガニック・マーケティング・コミュニケーション・ミックス」の一つなんだろうが、これを彼女クラスの超大物アーティストが本格的にやるとなると、やはり何とも感慨深いものがある。 国内の某著作権管理団体やコンテンツホルダーがこぞってYoutubeを目の敵にして、ネット上の映像配信にある一定の歯止めをかけようとしているなか、このように合法的にしっかりとネット映像配信をプロモーション手法として活用してくる事例は今後どんどん増えていくに違いない。 ただ、今回のネット上の映像配信プロモーションは、CDが発売されて間もなく終了するわけで、やはりまだ発売元としてはPVを無料でフル配信し続けることがCD販売を圧迫するリスクが怖いのだろう。 しかし、ネットでのPV視聴はCDを購入することのプラスのインセンティブにこそなれ、マイナスのインセンティブにはならないだろう。だって、この僕のブログで彼女のPVを見てCDを書おうと思う人はいても、ここでPVを見たからCDは買わないでおこうと思う人はいないだろうから(そもそも知らない人は買う訳もないのだから)。 というわけで、発売元の東芝EMIさんにはぜひともCD発売後もPVの無料フル視聴を続けてもらいたい。耳出しショートカットにしてますます僕好みになったヒッキーを僕のブログに貼り続けさせてください。何卒何卒よろしくお願い致します。・・・と、いくらここで主張しても聞いてもらえないんだろうなぁ。 Posted by MK @ 03:31 AMPermalink | Comments (4) February 06, 2007
『支え、支えられるコミュニケーション:スラムダンク奨学金』
あの「スラムダンク」がまたやってくれた。そんな思いでいっぱいだ。少し遅ればせながらではあるがぜひ紹介したい。
ウェブ、新聞、オンサイトを繋げ、ユーザー一人一人の参加をベースにしたキャンペーンという点だけでも十分に画期的だったが、それ以上に素晴らしかったのは、作者の井上雄彦氏の読者への感謝の思いが本当に素直に伝わってきたということだろう。 陳腐な言い方になってしまうが、ポイントはやはり「愛」なんだと思う。井上氏のバスケットポールに対する愛や読者に対する愛、そして読者の「スラムダンク」に対する愛。それらがウェブ・非ウェブにかかわらず、様々なメディアの上で奇跡的なかたちで融合したことが、いまだにこれを超えるクロスメディア・キャンペーンが思い浮かばない理由なのではないかと思う。 そして、この「愛」はまだ終わっていなかった。 井上氏の「バスケットボールそのものに対しての感謝の気持ちを形にしたい」という強い思いが、今回奨学金というかたちで実現した。バスケットボールを愛し、その夢を追い続けたいという思いを持つ高校生に対し、アメリカのプレップスクールでの学業及びバスケットボールのプレー機会を提供するのがこの奨学金の趣旨だ。 僕自身、4年間のイギリス留学時代の学費と生活費のほとんどは奨学金のお世話になった。留学1年目こそ自分のなけなしの貯金で賄ったが、2年目以降のお金の用意はまったくできていなかった。2年目以降のあの奨学金がなかったら僕のイギリス留学は間違いなく1年で終わっていた(ということは、いまのこの仕事にも就けていないわけだ)。だからこそ、僕も奨学金の有り難さ、大切さ、そしてそれに対する感謝は人並み以上に感じている。 この「スラムダンク」という作品は、作者と読者の双方が互いを支え合いながら、またその支え合いがいかに大切で素晴らしいものかということを双方がよく理解しているという、非常に希有な作品であろう。漫画・アニメというかたちを通じたコミュニケーションが、ここまで多くの人に支えられ、そしてまた多くの人を支えてきている事実は、まさに「愛の奇跡」としか言い様がない。 そしていま、再び作者から一つのボールが投げられた。今度はバスケットボールというスポーツに対して。そして、バスケットボールを愛する若者の未来に対して。誰がこのボールを受け取るのだろう。本当に楽しみである。 P.S. Permalink | Comments (0) January 10, 2007
『インターフェースのイノベーションはキャズムを乗り越えられるか:Apple iPhone』
いろんな意味でものすごいモノが登場してしまった。Appleが昨日Macworld Expoで発表したスマートフォン「iPhone」である。 「3.5インチタッチパネル搭載の『iPhone』、6月に発売」by ITmedia 「ついに発表--アップルの携帯端末『iPhone』とは」by CNET Japan 「『iPhone』で携帯電話市場に殴り込み 米アップル」by iZa! ここ1年ほど出る出ると言われ続けていたiPhoneがとうとう発表されたわけである。通話+ネット+音楽。機能的には恐らく現段階の携帯デバイスを開発するにあたり、想定し得るほぼすべての要素を取り入れたものだろう。その意味で、想定の範囲内ではあるのだが、しかしながら、それでも僕らの多くが裏をかかれた製品でもあると思う。 それは、やはりアップルのお家芸ともいえるインターフェースのイノベーションが、ここまでストレートに現実化・製品化されるとは思っていた人は少なかったのではないだろうか。少なくとも、僕はそうだった。 携帯デバイスの開発にあたり常にボトルネックになってきたのは、インターフェースとバッテリーである。 できるだけ小さな筐体に容易且つ快適な使用感を実現するインターフェースをどのように実現するか、そしてその製品のバッテリーがどれほど長持ちするのか、この2点を同時実現する製品を具体化させるのがどれほど難しいことか。 特に、インターフェースは生身の僕ら人間と冷たい機械を繋ぐ架け橋である点で極めて重要である。別の言葉で言えば、リアルとバーチャル、デジタルとアナログを繋ぐ結節点である。コンピューティング・デバイスにおけるインターフェースのイノベーションの速度は、極めて緩慢だ。PCのインターフェースがQWERTY型のキーボードから一歩も進化していないことからも、その深刻さは明らかである。 ここで、AppleはGUI (Graphic User Interface)とマウスという画期的なインターフェースを採用したMacintoshというPCを世に出し、コンピューティング・デバイスのインターフェースの革命を起こした。その後、Microsoftが追従してWindowsにGUIとマウスを採用したのは言うまでもない。 そして、先進国では1人1台に近いレベルで世の中に広く浸透した携帯電話に目を向ければ、まさにこのインターフェースのイノベーションが待たれていたわけである。今回のSteve Jobsの基調講演のなかで使われた2枚のスライドがうまくこのことを示してくれている(写真はLingrチャットルームから)。
そこで、Appleはマウス、iPodと段階的に進めてきたコンピューティング・デバイスのインターフェースの設計ノウハウをもとに、今回のiPhoneのインターフェースを開発したわけである。もちろん僕もまだ実機は見ても触れてもいないが、写真で見るだけでも、そのインターフェースの設計の細かさ(例えば、筐体を横にすれば自動的に表示を横向きに変更する点など)は容易に見て取れる。 こうしたインターフェース設計のノウハウは、3〜5年程度の単発の製品開発のスパンでは決して蓄積されないもので、20年以上にわたり革新的なコンピューティング・デバイスのインターフェースを企画・設計・開発を続けてきたAppleだからこそ実現できたものであることは間違いない。 某家電メーカーの中の人が今回のiPhoneの発表を見て「全世界の家電メーカーが力を合わせてもApple1社に勝てなかった」と言うのも実感として非常によく分かる。MacintoshでPCのインターフェース革命を起こし、iPodでデジタル音楽プレーヤーのインターフェース革命を起こしたAppleは、いままさに携帯デバイスのインターフェース革命を起こそうとしている。 ・・・・・・・・・・ と、華々しくApple賛美をしてこのエントリーを締めることもできるのだが、もう少し書いてみたい。といのも、携帯デバイスとしてのiPhoneの革新性は素晴らしいの一言ではあるのだが、一方でこのiPhoneのビジネス的な成否を見通せば、それほど楽観的にはなれないのではないかと個人的には思っているからだ。 Appleを代表するイノベーティブな製品であるMacintoshとiPodを比較して、世の中への普及という点で見れば、前者は競合(Wintel)に対して極めて劣勢であるが、後者はデジタル音楽プレーヤー市場において圧倒的なシェアを確保し続けている。 この違いはどこから生まれたのかと言えば、いくつかの仮説が考えられるが、ひとつあると僕が思っているのは、「ネットワーク外部性」の違いである。 ネットワーク外部性とは、あるサービスの利用者が増えれば増えるほど、1ユーザー当たりの便益が増加するということである。つまり、ユーザーが増えることでますますユーザーが増えていくという正のフィードバックが生まれる状態のことである(参考資料)。 この点で、PCのOSという分野はネットワーク外部性があるが、音楽再生プレーヤーの分野にはネットワーク外部性はほぼない。つまり、ひとつの仮説としては、Appleの革新的なインターフェースを生み出す競争力は、ネットワーク外部性の低い製品領域では圧倒的な強みとなるが、ネットワーク外部性の高い製品領域では支配的なシェアを獲得するような競争力とはなり得ないということである。 AppleがWintelとの競争のなかで学んだ教訓としては、ネットワーク外部性の高い製品領域においては、素晴らしいインターフェースを持つ革新的製品が必ずしも一番世の中に受け入れられる製品になるとは限らないということである。後発であろうとも、類似のインターフェースを持つPCとOSが市場を支配してしまったのである。 この点に関して、Appleは十分理解しているとも思える。AppleはMacintoshのハードとOSをアンバンドルさせずに一体として市場投入し続けてきているが、ハードからアンバルドルさせてOS単体で市場投入したWindowsのほうが後発であるにもかかわらず急速に支配的シェアを獲得してしまった。これはもちろん結果論ではあるが、敢えてOS市場のネットワーク外部性を無視してまでハードとOSを一体化させたAppleは、その必然的な帰結として、世の中全体で見れば1割にも満たない一部のプロフェッショナルとデザイン・センシティブな人たちにのみ受けれられたものに留まっている。 いや、一般受けしないコアな点にこそAppleの素晴らしさがあるんじゃないか、と思う人も少なくないだろう。また、Apple自身もシェア拡大はそれほど目指していないんだ、という議論もあるだろう。まあ、この望ましいAppleのすがたについて議論しはじめると切りがないので止めておくが、いま議論するのはiPhoneのビジネス的成否である。 言わずもがな、携帯電話サービスというのはネットワーク外部性がある領域である。携帯端末としての単なるハードとして完結する製品ではまったくなく、携帯電話ネットワークと接続するために携帯電話キャリアのサービス契約が必要不可欠な製品である。端末として革新的なインターフェースが、キャリア乗り換えの強いインセンティブになるのかどうか、非常に判断が難しいところだろう。 また、iPodの爆発的普及は、これまでデジタル音楽プレーヤーを使ったことのなかった人たちが1台目としてiPodを買うというケースが多かったからだと思われるが、既に1人1台に近いレベルで普及した携帯電話市場において、iPhoneのインターフェースの革新性が多くのユーザーにとって製品買い替えの強いインセンティブになるのかも微妙なところだろう。 さらに言えば、携帯先進国としての日本における現状として、携帯電話とデジタル音楽プレーヤーの一体化にどれほどのニーズがあるのかも検証が必要だろう。上記したように、インターフェースの問題と並ぶ携帯デバイスのもう一つの問題がバッテリーである。通話機能と音楽再生機能をバンドルすれば、バッテリーの持ちは一気に下がるのは当然で、それを嫌って、最近の携帯電話のほぼ全てに音楽再生機能が搭載されているにもかかわらず、その機能をほとんど使わないユーザーは少なくないと思われる(統計データはないが、僕の周りの実感として)。 というわけで、革新的インターフェースを持つMacintoshがPCやOSの市場における「キャズム」を乗り越えられなかったように、同じく革新的インターフェースを持つiPhoneが同じ状況にならない保証はない。双方の市場に共通するのは、ネットワーク外部性である。言い換えれば、ネットワーク外部性の低いデジタル音楽プレーヤー市場で成功したiPodと同じアプローチ、すなわちインターフェースのイノベーションでユーザーを惹き付けるアプローチは、iPhoneのビジネス的成功を約束するわけではないということだ。 Appleは広告マーケティング的には非常に優れた企業であると良く言われる。MacintoshやiPodの広告キャンペーンはそれだけで多くの人の心を惹き付けてきた。ブランドとしてのMacやiPodの育成もなかなか巧くいっていると言える。しかし、上述してきたような市場のネットワーク外部性をふまえた事業戦略の展開では、これまでAppleはお世辞にも巧くやってきたとは言えない。 では、ネットワーク外部性をふまえたiPhoneの事業展開を検討すれば、シンプルにユーザーベースを増やす方法として、iPhoneを提供するキャリアの数を増やすということが考えられる。今回Appleはあくまで端末を提供するハードメーカーであって、携帯電話サービスまでは提供しない。そうなると、できるだけ大きなユーザーベースを保有する複数のキャリアとの連携が欠かせない。 しかし、今回の発表ではiPhoneが使えるキャリアはCingular Wirelessとの単独契約になっているようだCingularは5000万ユーザーを保有する北米最大手キャリア(シェア31%、2005年)だが、ほぼ同シェアのキャリアとしてVerizonとSprintもある。iPodとiTMSの成功は、幅広い音楽レーベルとの契約により実現した提供楽曲数の多さにあったわけだが、今回のiPhoneの場合は、Cingularとの単独契約によって同様の提携展開は不可能である。この点でも、Apple単独の事業展開だけではどうしようもないユーザーベースの壁があるわけである。 上掲の記事で、2008年には1年間で1000万台のiPhoneが売れるとJobsは見ているそうだが、これは世界の携帯電話市場シェアの約1%だそうだ。1%・・・。もとの市場規模が大きいだけに、単なるシェアの数字に拘り過ぎるのは良くない。シェアは低くても、革新的な機能とサービスで、それを求めるユーザーに確実に受け入れられて、十分な利益が出せれば良いという考えもある(特に投資家サイドから)。 まとめるとすれば、僕の今のところの見立てでは、AppleのiPhone事業の発展可能性としては、iPodのような爆発的な普及と成功を収めるのではなく、Macintoshと同じようなイノベーター層にのみ受け入れられるデバイスに留まる可能性が高いのではないかと考えている。もちろん、こうした僕の見立てを大きく裏切られるような事業展開をAppleがやってくれることを期待してやまないわけであるが。 企業名をApple Computer Inc.からApple Inc.に変えて、本格的に総合家電メーカーへの道を歩もうとしているApple。新生Appleの真価は、iPhoneの成否によって問われると言っても言い過ぎではないだろう。Appleの今後の動向からは目を離せない。 ちなみに、iPhoneの国内での販売の2008年になるそうだが、どこのキャリアから出るんだろう。ソフトバンクの孫さんがこのiPhoneの発表の場にいたそうだが、ということは・・・。 まあ、僕個人としては、どのキャリアから出ようがiPhoneが国内販売された時点でそのキャリアに躊躇無く乗り換えますが(笑)。 Posted by MK @ 10:32 PMPermalink | Comments (2) December 14, 2006
『学生をエンパワーするブログの可能性:れせぶろ!』
いくら忙しいと言えども、このことはぜひ書いておかないといけない。 僕の良く知っている本学商学部の学生である梶井雄介君が立ち上げた株式会社レセオが提供しているサービス「れせぶろ!」が急速に注目を集めている。
「レセオ、採用ブログポータルサイト『れせぶろ!』開設」by Yahoo! ニュース
そんな彼は、ショッピングサイト運営に安住せず、いち早くブログの可能性に目をつけて、自ら会社を立ち上げて新たな事業をスタートさせた。それが彼の会社であるレセオだ。 そのレセオのメインサービスが採用ブログポータル「れせぶろ!」である。簡単に言えば、就職活動を行う学生と採用活動を行う企業を繋ぐ新たな「メディア」としてブログを活用したサービスである。 学生の就職活動においてウェブは欠かせないものになった。情報収集、業界研究、企業へのエントリーや連絡、etc. もはやウェブ無しでは就職活動は何もできないと言っていいだろう。僕が10年以上前に就職活動をしていた頃と比べると、桁違いの量の情報を得ることができ、段違いの人のネットワークを活用できるようになった。 では、その結果として学生が一昔前に比べて満足度の高い就職活動ができるようになったかと言えば、まったくそうではない。情報量の拡大が、直接的に就職活動の効率性を高めるわけではない。情報量が増え過ぎることで、それまで以上に学生は混乱し、方向感覚を失い、藁をも掴む思いで、少しでも知っている「ブランド企業」に引き寄せられる。そこで待っているものは、昔以上に過酷な戦い・・・。そんな僕の思いは随分前にここにも書いた。ウェブの発展と普及により、今も昔も思い悩み戸惑う就職活動中の学生は少しでも救われるようになったのだろうか。 当たり前だが、情報の量が増えれば、情報そのものがコモディティ化する。単に情報が増えただけでは、それを利用する側からすれば効率や満足度の向上にはつながらない。今も時々刻々と増え続ける情報の大洪水の中で、価値ある情報は相対的にどんどん少なくなってきている。学生にとって就職活動に役立つ情報はどんどん見つかり難くなってきている。 そんななか、やはり学生が一番知りたいのが、企業の採用担当者の「ホンネ」だ。その企業はどんな人材を求めているのか。採用において重要視しているポイントは何なのか。新しい人材に何を期待しているのか。そうした採用担当者の「ホンネ」が分かれば、学生ももっと適切かつ効果的に企業にアプローチできるし、また企業側としても求めているイメージに近い学生にもっとエントリーしてもらえるはず。 そんな学生と企業の「橋渡し」をするため、せれぶろ!は企業の採用担当者にブログを書いてもらい、学生に対してダイレクトにメッセージを投げかけてもらう。学生はブログエントリーにコメントできるし、担当者に直接メールも送ることができる。いままでなかなか直接対話ができなかった学生と採用担当者をつなぐユニークなメディアになっているのである。 梶井君という直接知っている学生が取り組んでいる事業という点を脇に置いても、ビジネスモデルとして純粋に高く評価したい。僕らにとってネットの一番の可能性は「個人のエンパワーメント」。いままで個人レベルでは不可能だったいろいろなことがネットを活用することで可能になる。このれせぶろ!の狙いはまさに「就職活動中の学生のエンパワーメント」。それが採用担当者をもエンパワーする可能性を秘めている。 最後に余談になるが、この社長の梶井君と、営業部長をしている升遷君は、二人とも僕のゼミに入るはずだったのだが、二人ともこの事業に全身全霊をかけたいと思うようになって、僕は二人に「ゼミより面白いことを見つけました」なんて言われて去られてしまったという経緯がある。完全にフラれてしまった立場の僕としてはかなりheart brokenだったわけだが、彼らは今でも時々研究室に顔を出してくれ、またこうして彼らの頑張りが徐々に実を結んでいることをメディアを通じて知ることができて、本当に嬉しく思う。 というわけで、就職活動中の学生さんの皆さんには、「れせぶろ!」を強く強く推したいと思います。いっぱい使って、至らないところは彼らにぜひフィードバックしてあげてください。これから就職活動も本格化してきますが、就職活動中の皆さん、「れせぶろ!」を使いながらぜひ頑張ってください!
Permalink | Comments (2) December 11, 2006
『これはヤバい!!:モバゲータウン』
最近仕事が立て込み過ぎて死にかけなのに、こんなときに限って強烈に面白いケータイネットサービスを使い始めてしまった。最近話題の「モバゲータウン」だ。 ・「成長速度はmixiの倍・9カ月で200万人 携帯SNS『モバゲータウン』の強さ」by ITmedia ・「絵文字も空気も読めません 10代がハマるSNS『モバゲータウン』を28歳(♀)が探検した」by ITmedia ・「【モバゲータウン解説】『モバゲータウン』という恐ろしいサイト」by モバイル魂 モバゲータウンの概要や特徴などは、上記記事でほぼ分かると思うのでここでは繰り返さない。ケータイのサービス、SNS、アバター、子供騙しのお遊びだろうと思っているそこのあなた。だまされたと思って使ってみなはれ。こりゃほんとスゴい。何がスゴいって、 ●僕のようなオッサンでも余裕ではまる ●反則技に近い縦横無尽のアフィリエイト ●リアルと切り離された世界で生まれる活発なコミュニケーション ●ケータイに最適化された心地よいユーザビリティ などなど。少し使ってみた感じでは、ユーザーは高校生とOL・主婦が多いような気がする。これまでSNSを使っていなかった層がどっと入ってきているような感じだ。少々頭打ち気味だったPCベースのSNSビジネスだったが、ニンテンドーDSの戦略と同じように、これまでの非ターゲット層の取り込みに成功したように思う。 まだまだ使い始めて間もないんだが、使い込めばもっと面白くなりそう。10代がmixiなんかよりこっちにハマるのは超納得。DeNAの回し者ではないが、登録・利用いっさい無料なので、一度使ってみることをオススメする。 ただし、パケ死と睡眠不足にはくれぐれもご注意を・・・。 Posted by MK @ 11:39 AMPermalink | Comments (2) November 06, 2006
『第2世代のSNSに向けて?:MySpace+Softbank』
今朝の日経新聞の1面にデカデカとこんな記事が載った。こんな記事が経済紙とはいえ全国紙の1面をかざるとは時代も変わったもんである。 「ソフトバンクと米ニューズが提携・SNS、最大手の日本語版」 by NIKKEI NET ソフトバンクと米メディア大手ニューズ・コーポレーションは、会員制ネット交流サービスのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)事業で提携する。今月に日本で折半出資会社を設立し、ニューズ傘下企業が運営する世界最大のSNS「マイスペース」の日本語版サービスを始める。SNSは日本での利用者が1000万人を超えて急成長している。新規参入を狙うソフトバンクと、日本進出を検討していたニューズの思惑が一致、共同事業に踏み切る。 実は既にMySpace日本語版の試験サービスは始まっている。といわけで、早速僕もアカウントを取ってみた。ちなみに、招待制のmixiとは違い、MySpaceは誰でもすぐに参加できる。 これに関連して、MySpeceのCEOのクリス・デウォルフ氏のインタビュー記事がとても興味深い。招待制でテキストの日記を中心としたmixiは第1世代のSNSで、オープン制で動画や音楽を自由に使えるMySpaceは第2世代のSNSなのだそうだ。 「ロングインタビュー:mixiはもう古い? 新世代SNS『MySpace』に聞く」 by 日経トレンディ 第1世代と第2世代の分かれ目は正直曖昧なものだが、それでも明らかなのは、mixiが昔のパソコン通信の時代にあったような「クローズドであるが故の安心感」を醸し出していたのとは対照的に、MySpaceは明確に「オープンであるが故の価値の広がり」を追求してきたと言える。オープンであるということは、当然ながら検索エンジンにも引っかかることになる(当然いろんな設定はできるが)。そこは「MySpace(私有地)」であると同時に、誰でも入ってくることができる「CommonSpace(共有地)」でもあるのである。 この「オープン」であることの価値は、間違いなくウェブ(WWW)との親和性が高い。誰にでも開かれたインターネット上に広がったウェブ空間のなかで、同じアーキテクチャ(設計思想)を持った技術やサービスがいくつも生み出されてきた。そして、いまではApacheやLinuxに見られるように現代のウェブの根幹を支えるものになっている。 MySpaceの急速な拡大はこのことと無関係ではないように思う。MySpaceの登録アカウントは、2006年8月についに1億を超えたそうだ。ここには、700万ユーザーを擁する国内最大SNSのmixiでさえまだまったく実現できていない世界が広がっている。はたして、このオープン思想により支えられ急速に広がってきたSNSを僕ら日本のネットユーザーはどのように受け入れるのだろうか。 ひとつ余談になるが、以前にこのBlogでも紹介したYahoo!のSNS「Yahoo! Days(ヤフー! デイズ)」だが、その後目立ったサービス展開もなく、僕的には「ほんとにやる気あんの???」と言いたくなるくらいYahoo!ジャパンの姿勢にはガッカリしていたのだが、今回のニュースを見てなぜか腑に落ちたような気がした。というのも、これは完全に妄想なのだが、このMySpaceとソフトバンクの提携は、ソフトバンクがグループとして本格的に取り組むSNSのプラットフォームに、Yahoo! DaysではなくMySpaceを選んだということではないかということだ。 今回のニュースのタイミングから、恐らくMySpace側(News Corporation)とソフトバンクの交渉は夏前から進んでいたと思われるので、7月末にローンチしたYahoo! Daysのサービス拡充があまり進んでいないのも妙に納得してしまったのだ。もちろん、ソフトバンクがMySpaceとYahoo! Daysを併存させることも十分に考えられる。特に、モバイルに関してはYahoo!との連携を既に進めているソフトバンクが、携帯電話上のサービスとしてMySpaceをどう扱うのか難しいところもあるからだ。 まあ、いろんな意味で注目の動きである。僕ら日本のネットユーザーが、SNSの未来をあくまで現在の草の根メディアの延長線上に見るのか、それともMySpaceのようなパーソナルでありながらマスでもある新たなウェブメディアとしてSNSの価値を見いだすのか。 もちろん、未来は二者択一であるほど単純でも明白でもない。しかし、いまはいろんな妄想(笑)をしながら、もうしばらくSNSと戯れてみようかなと思う今日この頃である。 Posted by MK @ 11:57 AMPermalink | Comments (1) August 07, 2006
『Google Scholarの到来と日の丸検索エンジンの憂鬱』
8月になって、ようやくじっくりと研究に没頭できる時期に入った。しかし、僕がこの夏やらねばならない仕事はひとつだけ。そう、翻訳です。もう待った無しです。背水の陣です。この夏に仕上げなければマジでヤバいっす。 しかし、目の前に大きな仕事があればあるほど、心はどこか違うところへ飛んでいきがち。現実逃避するようにネットをふらつついていると、ここぞとばかり面白いネタがいくつも見つかり、頭は完全にそっちにもってかれてしまう。 Google周りの動きにはやっぱり目が離せない。今日、MTVの音楽クリップなどのコンテンツをAdSenseの広告ネットワークで配信するというモデルを発表した。YouTubeが掘り当てたネット上で動画コンテンツを簡単に見たいというユーザーニーズの大フロンティアを、Googleは自社の圧倒的な広告ネットワークに繋げて収益化を目指すのは当然の方向だろう。詳細はまだ分からないが、この動きには注目である。 けど、僕が個人的にもっと注目するのは、このニュースに隠れるようにひっそりと報道されたもう一方のGoogle関連ニュースだ。 ●「グーグル、学術論文検索サービスの日本語版を年内開始」by NIKKEI NET グーグル日本法人は、日本語の学術論文をインターネット上から無料で検索できるサービスを年内に始める。論文のデータベースを運営する国立情報学研究所などと連携し、入力したキーワードに関連した論文を選び出す。見つけた論文が他の論文から引用された件数もわかる。大学や民間企業で働く研究者の利用を見込む。 早い話が、Google Scholarの日本語版が年内に登場するというニュースである。Google Scholarはアカデミックな世界の人間には結構知られているネットサービスではあるが、一般的にはそれほどの認知はされていないのではないかと思う。要は、学術論文のデータベースなのだが、論文相互の引用(citation)の状況を簡単に見せてくれるので大変便利である。ちなみに、僕の論文について調べてみると、こんな感じで出てくる(注:一部他の人の論文が含まれています)。トップの論文はそこそこ引用されているみたい。 このニュースをさらっと読むだけだと、「なんだ、Googleのベータサービスがひとつ日本語化されるだけでしょ」と思うかもしれないが、注目すべきは「国立情報学研究所などと連携」という箇所である。つまり、国立大学法人法に基づく独立行政法人とはいえ、国のお膝元の組織が他でもないGoogleと連携するというのである。 国立情報学研究所というのは、ある世代以上の大学関係者の間では「学情」と呼ばれる学術情報センターが元となって2000年にできた組織である(今は文部科学省管轄の独立行政法人)。この組織の一番のミッションは、今では「情報学の統合的な研究・教育の展開」となっているが、設立当初から続く重要な仕事は「学術情報ネットワークの構築と整備」である。つまり、学術論文などの研究成果のデータベースづくりである。日本の大学で仕事をする研究者の研究成果はここのデータベースに登録されるようになっている(全部ではないと思うが)。 上掲の記事によれば、これまで自前で学術情報データベースを作ってきた国立情報学研究所が、登録データをこのGoogle Scholar日本語版に提供するというのである。本家アメリカのGoogle Scholarは、これまでIngentaやExtenzaなどの学術ジャーナルアグリゲーターと提携して検索可能な学術情報データを増やしてきたが、日本語版の導入にはこれと同じように日本語の学術情報のデータ仕入れ先を確保する必要があった。 そして今回の報道である。日本国内の包括的な学術情報は事実上この国立情報学研究所しか持ってないので、この流れも当然とも言える。国立情報学研究所としても、せっかく作ったデータベースをより多くの人に利用してもらいたいという思いは当然だし、今回の連携の意思決定も至極全うなものだと思う。とはいっても、やはり国内の学術情報を取りまとめる「本丸」がこんなにアッサリと落ちるとは思わなかったので、僕的にはかなりオドロキだったわけである(いや、実際はアッサリでもなかったかもしれないけど・・・)。 ここまで読んでお気づきの方も多いと思うが、当然のように気になってくるのは、経済産業省が音頭を取って産官学連携で国産の検索エンジンの開発を目指して設立されたコンソーシアムの姿勢とのコントラストである。 経産省の担当者の方が言うように、検索エンジン技術のGoogleの独占的状況が国の情報政策的には無視できない問題として捉えられている背景もよく分かるが、そこで、国をあげてGoogleに対抗する日の丸検索エンジンを開発しようというのがいかにも日本的である。池田信夫氏のブログ経由の情報によれば、このプロジェクトに対して経産省は来年度の予算として3年間で300億円の予算を要求するそうだ。 そうした動きのなかで、今回のGoogle Scholar日本語版のニュースで採り上げられたように、別のお役所の下にある組織ではGoogleとの連携姿勢が明確に出てきている。一方のお役所では、税金を投入して「国策」としてGoogleに真っ向から対決する姿勢。別のお役所のほうでは、割り切ってGoogleと連携してより便利なサービスを提供しようとする姿勢。お役所が違えば足並みも揃わないという、これまたいかにも日本的状況である。 一ユーザーとしては、どちらの姿勢が好ましいかは明らかだが、より長期かつマクロの視座に立って見れば、問題は複雑化する。 経産省が進めるこういった「国策プロジェクト」を強く批判する池田氏でも認めるように、科学技術の発展に政府予算はこれまでも大きく寄与してきている。問題は政府プロジェクトの事後評価がうまく機能していないというのも納得である。ただ、その事後評価というのは、dankogai氏が指摘するように、結局は僕たち生活者(納税者)自身が果たさなくてはならない役割でもある。 ただ、僕ら市民一人一人がその事後評価を行うために必要な技術基盤となるのは、結局のところ、個人が自由(フリー)に使えて網羅的に情報を検索できるサービス、すなわち検索エンジンなのであり、それを提供するのは国なのか私企業なのかという問題に再び戻ってしまう。ただ、その場合の検索エンジンは「ビッグブラザー」的な監視システムとして働くのではなく、東浩紀氏が言うところの「偏在するリトル・ブラザー」を支える技術基盤となるのだろう。僕らの課題は、そうした緩やか監視社会のなかでのインターネットの役割や、その中での情報流通の仕組みを考えることなのだろう。 そんな中で、シンプルに「ユーザー最優先」の理念を貫いてサービスの開発と導入を粛々と進めるGoogleには清々しさすら感じる。Googleにとって、大仰な政策論争や制度論争は二の次なのだろう。上場している営利企業なのだから、それで良い。ただ、そのサービスを利用する僕らは、こうした議論も頭の隅にちょっとは置いておかないといけないのだと思う。それが、次代のインターネットの制度設計の方向性に関わってくるのだから。 とまあ、Google Scholarネタからトンでもない方向への話題の飛躍だけど、そんな妄想に更けさせてくれるGoogle先生の偉大さに感銘を受けつつ、やらねばならない目の前の仕事に戻ります・・・(泣)。 Posted by MK @ 06:31 PMPermalink | Comments (2) August 02, 2006
『Yahoo! Days始動』
いよいよ真打ちの登場と言うところか。国内のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)ビジネスにおいて、ブッチぎり先行しているmixiの真の対抗馬とも言えるYahoo!のSNS「Yahoo! Days(ヤフー!デイズ)」が一昨日正式にスタートした。 国内のリーディングSNSであるmixiの現在のユーザー数は約500万人。いまでは、ネットのことに詳しくない学生ですらmixiの名前はほぼ全員知っているほど若者の間では浸透している。 ここに、Yahoo! BB会員(508万人)とYahoo!プレミアム会員(635万人)の計1100万人を擁するYahoo!が攻勢をかける。国内最大級のネットユーザーのアカウントを保持するYahoo!が、国内最大のポータルサイトと各種サービスとの連携のなかで、mixiを追撃するわけである。いや、追撃というより、違うサービス体系を目指しているといったほうが良いだろう。 Yahoo! Daysの強み・弱みなどの分析は、山崎秀夫氏が素早くやってくれているので割愛するが、やはり良質かつ身元保証のあるユーザーアカウントを1100万も保持していることや、既存の各種Yahoo!サービスとの縦横無尽の連携を想像するだけで、ちょっとワクワクしてくる。今後の展開に大注目。 最後に・・・、自分のYahoo! Daysのお友達が一人もいないのは強烈に寂しすぎるので、お友達になってくれる人を大募集します。Yahoo! Daysに招待して欲しいという方は、下のコメント欄に一言書いてくれれば招待メールを送ります。いまならコミュニティのオーナーになり放題です(笑)。 【追記 8/26】 Permalink | Comments (18) July 15, 2006
『片翼の新聞2.0:産経「iza!」の挑戦』
いまや猫も杓子も「2.0」。ここ1〜2ヶ月ほどで、各種一般ビジネス誌がこぞって「Web2.0」絡みの特集を組んだ。週刊ダイヤモンド、週刊エコノミスト、週刊東洋経済などなど。こんな一般ビジネス誌までもWeb2.0を語り始めることに個人的にはどこか違和感を感じつつも、この次世代のウェブに対する期待感が、一部のギークの間だけではなく、世の中全体に広まりつつあるとだけは言えるだろう。 この流れに便乗して、ウェブ以外のいろんな分野でも「2.0」が使われるようになった。こうなったら、そろそろ僕も「大学研究者2.0」を語らないといけないのかなぁ。まあ、それはまたの機会に。 今回採り上げるのは、「新聞2.0」。全国紙のひとつである産経新聞が、本体のウェブサイトとは別に、Web2.0を強く意識したニュースサイト「iza!(イザ)」を立ち上げた。 要は、ニュースとブログの統合サイトなのだが、やはり旧来型マスメディアの本丸である全国紙が本腰を入れてウェブを活用としている姿勢はいくら評価してもおつりがくると僕は思う。 このiza!の登場の背景を以下の3本の記事はとてもうまく整理してくれている。ちなみに、担当記者はかのIT戦士・岡田有花女史。この人は本当に良い記事を書く。 この2番目の記事は大変興味深い。ネット人口がこの5年で5倍になったのに、新聞社のサイトの訪問者数は極めて緩慢な伸びしか見せていない。僕のような「ネット以前」の時代を知っている世代は、いまでもほぼ毎日各紙のサイトを見に行くが、「ネット以後」の世代の新聞離れは極めて深刻なレベルだと思われる。うちの学生でも、定期的に見ているニュースはなんとmixiニュースだけという者もいる。 こうした新聞離れに対して、大手新聞社はどれほどの危機感を持っているのだろうか。「持っているはずだ」という期待などではなく、「持っていて欲しい」という願望すら虚しくなるというが実態だ。記事の中で、萩原雅之氏@ネットレイティングスは「新聞社が編集するニュースパッケージの需要が落ちている」という言葉が引用されているが、まさにその通りだろう。 そんな中、「新聞の枠を取っ払ったサイト」を目指しスタートしたのが産経のiza!である。全記事にトラックバック可能、60名以上の記者やスタッフがブログを公開し、ユーザー視点での記事構成を行うことで、既存の新聞社サイトの枠を大きく超えようとしている。特に、「記者ブログ」は目玉だろう。古森義久氏などの産経の大物ジャーナリストがブログを書くというのは、やはり何か新しい時代の流れを感じるのは僕だけだろうか。 ベータ版の公開から1ヶ月ほど経ち、僕もこのiza!をほぼ日常的に使ってみた。一般的な新聞社のサイトと比べると、若者や女性が関心を持ちそうなホットトピックや時事ニュースが上位に表示され、誤解を恐れずに言えば、「昼間のワイドショー的」な記事構成になっている。これはこれで面白い。僕は、同じ産経の芸能・スポーツ系サイトのZAKZAKの愛読者なのだが、iza!はZAKZAKほど芸能・スポーツ一色ではないので、僕のような芸能ネタ好きのミーハーな者だけでなく、その他大勢の人にもiza!は取っ付きやすい構成になっているのではないかと思う。 全記事でトラックバックを受け付けるというのも、大手新聞社が運営するサイトということを考えれば英断と言って良いだろう。これまでにも、CNETのように記事にフリーにトラックバックを打てるニュースサイトはいくつも存在したが、大手新聞社にとって一番遠いところにあると思われたConsumer Generated Media(CGM)の価値観や機能を彼らが取り入れたのは画期的である(実際、このエントリーもiza!内のこの記事にトラックバックを打っている)。 しかし、僕としてはどうしても気になり、また口惜しく感じるのが、従来の紙ベースの産経新聞との連携の貧弱さだ。 正直言って、ブログを活用したニュースサイトにはなんの新規性も技術的独自性もない。ニュースソースの供給を確保すれば、どの企業でも始められるサービスである。記事構成のバッケージングによる差別化も良いのだが、その差別化競争には明確な競争軸がないことに加え、従来の産経新聞のイメージを否応無く背負ってしまうことが足枷になりかねない。 では、iza!がYahoo!トピックスやGoogleニュースやmixiニュースに対抗するためにはどうすれば良いかということを考えれば、競合には無いリソースを使うという当たり前の戦略がすぐに思い浮かぶ。すなわち、産経新聞本体との連携である。 全国紙5紙のなかでは発行部数が一番少ないとは言え、それでも産経新聞は220万部を発行するメジャー紙である。依然としてネット発祥の多くのニュースサイトがリーチしたくてもリーチできない生活者層を確実に押さえているのである。この紙ベースの新聞とネットベースのニュースサイトとの連携は双方にとって新しい競争力になり得る。 実際のところ、産経新聞は毎週水曜日の朝刊に「iza paper」という特集ページを1ページ全面で用意して、iza!の記事や特集内容を紹介している。ただ、ここで紹介されているのは、iza!の記事やブログエントリーの「焼き直し」でしかなく、紙⇔ネットの連携を意識したつくりにはまったくなっていない。 このようなサイトの内容を採り上げる特集を全面で週1回用意したというだけでも、全国紙としては画期的なのかもしれない。しかし、いくら「新聞2.0」を標榜しても、リアルの新聞とネットのサイトがこの程度の連携しかできないというは片手落ちではないだろうか。しかも、それこそが他のニュースサイトにできないことだというのに。 もちろん、「新聞2.0」は敢えてリアルの新聞との連動は目指さないというのも一つの方向性ではある。しかし、その戦略を全国紙を発行する新聞社が採るのであれば、ネット・ネイティブのYahoo!トピックスやGoogleニュースとの差別化競争は極めて厳しいものになるだろう。さらに言えば、ネットのニュースサイトの積極拡充はカニバリゼーションを引き起こしかねず、リアルの新聞を有するというリソースは逆に大きな足枷となる。 ただ、旧来のメディアの価値観に縛られたリアルの新聞と、Web2.0を目指すニュースサイトが、いきなりガッツリ連動し始めるというのも現実味のない話だろう。僕もそんなに急速な変革を期待しているわけではない。しかし、明らかなのは、いくら「新聞2.0」を目指そうが、それがネットの世界に閉じてしまっている限り、本当の意味での「新聞2.0」は実現できないということである。 繰り返しになるが、今回紹介した産経のiza!に関して、僕はとても肯定的な評価をしている。ここまで辿り着くだけでも、社内的には様々な障害を乗り越える必要があっただろう。スタートを切ったこと、そのことだけでも十分に賞賛に値する。 だが、「新聞2.0」を目指すとまで言うのであれば、ブログやらトラックバックやら、サイト内の工夫だけでなく、本体の産経新聞まで巻き込んだ、大きなリアルとネットの連携のなかで「新聞2.0」を語って欲しい。なぜならば、本当に変わらなければいけないのは、本体のほうなのだから。 今そこまで求めるのは、欲張りな注文だろうか。 Posted by MK @ 06:46 PMPermalink | Comments (2) June 15, 2006
『リアル-ネット間の「ゲート」を押さえるマーケティング?:決済・端末・アカウント』
先週・先々週と連続で東京出張だった。学会での発表に合わせて、いろんな人たちに会ってきた。昔の職場の同僚、いま東京で働いているゼミの卒業生、興味関心を同じくする研究者仲間、などなど。いろんな人と会うと本当にいろんな刺激を受ける。 CNETブロガーの渡辺聡氏もいつもそんな刺激をくれる人。忙しい渡辺氏の予定の合間を縫って品川でランチをご一緒した。その渡辺氏が最近あげたブログエントリー「マーケティングは変わろうとしているのか」を読みながら、僕も自分なりにいろいろ考えを巡らしていたら、こんな記事が目に飛び込んできた。 ●「噂のグーグル支払システム「Gbuy」、6月末にスタートか」 by CNET Japan ●「eBayのPayPalがSkypeにインテグレーション」 by Ad Innovator(解説記事) ++++++++++ 【追記 6/16 11:50am】 柿原正郎 ++++++++++ 【追記 7/22 11:50pm】 結局、こういうことになりました。よろしくお願い致します。 Permalink | Comments (4) April 27, 2006
『あまりに刺激的なYouTube』
最近はちょっと冴えない内容のエントリーばかりなので、久しぶりにちょっとまともな話題でも。 YouTube(ユーチューブ)という動画共有サービスをご存知だろうか? このブログを読んで頂いている多くの人は「何を今さら」という感じかもしれないが、この前ゼミの学生にYouTubeことを知っているか聞いたら、知っていたのは10人中1人だけだった。mixi(ミクシィ)のことは、うちのような所謂文系学部の学生でも今ではほとんどが知っているが、YouTubeの認知度はまだまだ低いようだ。 どんなネットサービスなのかというと、誰でも無料で動画をアップロードでき、それをいろんな人と共有できるというもの。個人で撮影したプライベートの映像から各種有名アーティストが登場する映像まで、ありとあらゆる動画が公開されている。建前上、著作権を侵害しない動画のみが投稿されるはずなのだが、実際は著作権侵害の点ではグレーなものや真っ黒なものまで公開されている。 しかし(というか、だからこそ)2005年春のサービス開始以降、爆発的な勢いでユーザーを獲得し、2006年3月には、YouTubeのサイト訪問者数が「iTunes Music Store」を擁するAppleのサイトの訪問者を超えてしまった。 人気の秘密はとにかく触ってみれば一目瞭然。日本語にはまだ対応していないが、例えばお好みの歌手の名前をアルファベットで検索してみれば、ズラッとその歌手のPV(プロモーション・ビデオ)が出てくる。例えば、「エロかわいい」で有名な某女性アーティストを検索すれば、かなりの数(ほとんど?)の彼女のPVを見ることができる。 僕は1980年代半ば〜90年代半ばにかけて、かなりの洋楽オタクだった。特にイギリス系のアーティストにはまって、超メジャーアーティストから、超マイナーアーティストまで、かなり幅広く聞いていた。YouTubeはそんな僕には涙もののサービスである。なんてったって、今ではなかなか見られないと思っていたPhil CollinsやGeorge MichaelやU2などの往年の名曲のPVがズラズラ見つかるからだ。さらには、Acid Jazz好きの僕には、Soul II SoulやJamiroquaiやThe Brand New Heaviesなんかが簡単に見られるのもたまらない。ここでPVを検索→見る→検索→見る・・・を繰り返していると、ほんといくら時間があっても足りない。 今回なぜこのYouTubeを採り上げたのかと言うと、こんなニュースを今日見たからだ。 『動画共有サイト「YouTube」、日本から212万人が訪問--利用率は米国内に匹敵』 - CNET Japan 日本ではまだまだ一部のネットユーザーの間でしか知られていないと勝手に思い込んでいたYouTubeが、実は日本でも劇的にユーザーを増やしているというのだ。 日本のユーザーのYouTubeへのアクセスは2005年12月から急増し、2006年3月には212万人に達した。日本国内での利用率は5.2%と、米国内での利用率5.4%に近づいている。また日本のユーザー1人あたりの平均訪問頻度は3.2回、利用時間は約33分と、いずれも米国ユーザーを上回り、「日本のユーザーの熱心な利用状況が浮かび上がった」(ネットレイティングス)という。 知らない間にここまで広まっていたとは、ほんとオドロキである。全ネットユーザー中の利用率5.2%というと依然低い利用率のように思えるかもしれないが、このサービスがスタートしてからまだ1年ちょっとしか経っていないことや日本語に対応していないことを考えれば、驚異的と言えるだろう。 しかし、このあまりに刺激的なYouTubeなのだが、ビジネス的にも非常に注目されているサ |